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既 刊

西洋文化の起源へ/信と倫理の根源へ/文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/神話・宗教系

チュウセイオランダゴ キツネノジョジシ

●中世オランダ語 狐の叙事詩
―『ライナールト物語』『狐ライナールト物語』
Het Middelnederlandse epos van de vos “Reynaerts Historie” en “Historie van Reynaert die vos” vertaald en verklaard door Yoichiro Hieda

狐の叙事詩 ★ 第50回日本翻訳文化賞受賞 ★
※本書の編訳・読解をされた檜枝陽一郎氏に、
  2013年度翻訳文化賞の「大賞」が授与されました。

檜枝陽一郎 ヒエダヨウイチロウ【編訳・読解】
ISBN: 978-4-86209-042-3 C3097
[A5判上製]526p 21cm
(2012-10-22出版)
定価=本体5524円+税

§15世紀のオランダ語「狐の叙事詩」2篇の完訳と、用文の徹底した考証により、動物寓話の形を取って語られた中世最高の叙事詩文学の本質を捉え描いた労作。
そのすさまじい弁証詐術の言葉と死闘の物語に、読者はおもわずも引きずり回される。

◆中世オランダ語による韻文写本『ライナールト物語』、散文印刷本『狐ライナールト物語』は、12世紀、フランス語の『狐物語』を受けて生まれ、印刷文化の出現による写本文学の民衆への浸透、日常に使われる言葉を用いた散文出現の先後に立つ作品である。2つの作品はさらに、ゲーテの『ライネケ狐』や各国語による辻売り印刷本にまで広範な影響を与えた。
◆王権と教権が与える「うわべ」の正義と法の言説、これに対抗する狐ライナールトの一族のすさまじい「本然の悪」と「知恵」の物語は、単なる処世の術を超えた共感と感動を人々に与えつづけ、やがて教会権力による「発禁処分」とさえなった。

【はじめに】から
物語は、聖霊降臨祭のある日の出来事を発端とする。春うららかな季節に、百獣の王ノーベルが諸侯会議を執り行おうとして全国に告知させると、大小の動物がこぞってやってきた。狐のライナールトだけは参内しなかった。動物たちはその場で王様に、ライナールトの狼藉をさんざん訴えたので、王様はライナールトを宮廷に連れてくるよう使者を派遣した。悪知恵のはたらくライナールトは、使者として派遣された熊のブルーンや雄猫ティベールトを騙して酷い仕打ちを浴びせる。三番目の使者として、親族のなかでライナールトともっとも仲のよい穴熊グリムバールトがようやく狐を宮廷に連れてくる。ライナールトは、縛り首になる寸前に王様に金銀財宝の嘘話を吹き込んで王様さえペテンにかける。しかし、結局は王様の寵愛をえて宮廷において最高位の代官に昇りつめる……

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【目次】
はじめに
凡例
第一編 ライナールト物語
一 序/二 諸侯会議/三 第一の呼び出し/四 第二の呼び出し/五 第三の呼び出し/六 処罰と和解/七 復讐と逃亡の企て/八 諸侯会議の延長/九 宮廷への二度目の出頭/一〇 猿メルテンと遭遇した話を宮廷でする/一一 雌猿ルーケナウの発言/一二 宝石の話/一三 狐と狼夫婦との口論/一四 決闘/一五 結末/追記
ライナールト物語関連の地名地図
ライナールト物語・訳註
ライナールト物語・人名地名索引
第二編 狐ライナールト物語
目次および序/第一章/第二章 ライナールトに対する狼イセグリムの第一の訴え/第三章 コルトワの訴え/第四章 穴熊グリムベルトがライナールトのために弁明して王様の御前で弁護した次第/第五章 雄鶏がライナールトを訴えた次第/第六章 王様が訴えに応答した次第/第七章 熊のブルーンの話、そして彼がライナールトによってお払い箱にされた次第/第八章 ブルーンが蜂蜜を食べた次第/第九章 ブルーンのライナールト提訴/第一〇章 ライナールトを連れてくるように王様がふたたび雄猫ティベールトを派遣した次第、そしてティベールトがライナールトによってお払い箱にされた次第/第一一章 穴熊グリムベルトがライナールトを宮廷へ連れてきた次第/第一二章 ライナールトが懺悔した次第/第一三章 ライナールトが宮廷に参上した次第、そして王様の御前で弁明した次第/第一四章 ライナールトが逮捕されて死刑を言い渡された次第/第一五章 ライナールトが絞首台に連れて行かれた次第/第一六章 ライナールトが王様の御前で、また聞きたがっているみなの面前で公に懺悔した次第/第一七章 ライナールトが自分を死に至らしめようとした者を窮地に陥れた次第、そして彼が王様の恩情を手に入れた次第/第一八章 イセグリムとブルーンがライナールトの画策によって逮捕された次第/第一九章 イセグリムとその妻エールスウィンが靴を脱がされた次第、そしてライナールトがその靴を履いてローマに旅立った次第/第二〇章 兎のキワールトがライナールトによって殺害された次第/第二一章 ライナールトがキワールトの首を雄羊ベリーンに持たせて王様に送った次第/第二二章 雄羊ベリーンとその一族全員がイセグリムとブルーンの手に委ねられ、彼らから殺害された次第/第二三章 王様が祝宴を催した次第、そして家兎ラプレールが王様にライナールトを訴えた次第/第二四章 烏コルバルトが妻の死についてライナールトを提訴した次第/第二五章 王様がこの提訴に激怒した次第/第二六章 穴熊グリムベルトがライナールトに警告した次第、王様が彼に激怒して殺害するつもりであったから。/第二七章 ライナールトがふたたび宮廷にやっきた次第/第二八章 ライナールトが王様の御前で弁解した次第/第二九章 王様がライナールトの弁解に返答した次第/第三〇章 ルーケナウ夫人が王様の御前でライナールトを弁護した次第/第三一章 窮地にあった蛇を救出した男の寓話/第三二章 ライナールトの一族の話、だれが親族であるのか。/第三三章 ライナールトが訴えられていたキワールトの死とその他の全事件を巧みな話術で弁解し、そして素晴らしい寓話を披露してふたたび王様の寵愛を手に入れた次第/第三四章 イセグリムがふたたびライナールトを訴えた次第/第三五章 ライナールトと雌狼の素晴らしい寓話/第三六章 イセグリムが決闘するためにライナールトに手袋を渡した次第/第三七章 ライナールトが手袋を受け取り、王様が両者に決闘場へ来る期日を指定した次第/第三八章 ルーケナウがライナールトに決闘でなすべきことを助言した次第/第三九章 ライナールトが決闘場に来て、両者が闘いはじめた次第/第四〇章 ライナールトとイセグリムが決闘をはじめた次第/第四一章 イセグリムに組み敷かれたライナールトが、哀願するように甘い言葉で彼に話しかけ、ライナールトがふたたび優位に立った次第/第四二章 イセグリムがライナールトに負けて、負けたことで決闘が引き取られ、ライナールトが面目を保って圧倒した次第/第四三章 ライナールトがイセグリムに勝って王様が決闘を引き取ったときに、彼が王様に語ったこのたとえ話/第四四章 王様が全事件についてライナールトを赦し、代官に任命して国中の最高位に就けた次第/第四五章 ライナールトが一族とともに晴れやかに王様と別れて根城のマルペルデュースに到着して、王様の寵愛を受けた次第 狐ライナールト物語関連の地名地図
狐ライナールト物語・訳註
狐ライナールト物語・人名地名索引
読解
(1)『ライナールト物語』
作者と成立場所/成立時期/時代背景としてのブルゴーニュ時代
(2)『狐ライナールト物語』
ヘラールト・レーウとその時代/韻文から散文へ
(3)『狐ライナールト物語』以後
(4)本書の挿絵について
(5)研究史上の各レベルおよび写本一覧
読解・註
参考文献
あとがき

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【訳者・著者紹介】
檜枝陽一郎(1956年~)
福岡県生まれ、現在、立命館大学文学部教授。
著訳書:ネリー・ナウマン 『山の神』 (共訳)、同 『哭きいさちる神スサノヲ』 (共訳)、同 『久米歌と久米』 、同 『生の緒』 、エミール・バンヴェニスト 『インド・ヨーロッパ諸制度語彙集Ⅰ・Ⅱ』 (共訳)、スティグ・ヴィカンデル 『アーリヤの男性結社』 (共訳、以上、言叢社)、『中世低地ドイツ語』(共著 大学書林)、『オランダ語1500』(編著 大学書林)、ウルリヒ・アモン『言語とその地位』(共訳 三元社)などがある。

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