美術造形・美術史/歴史系
仏典には美しい言葉が多いが、偈頌は仏典の精粋を語る美しい詩句であり、仏・菩薩の功徳を讃えて朗誦し、教典を読むに等しい功徳をもつという。本書では、石造遺品銘や鐘銘など豊富な拓例を掲げつつ、わが国で用いられる偈頌を集成して、初めてその全体像を描いた。各偈頌には、出典・解説・遺品例等を記し、仏典詩句が一般に流布した歴史的・宗教的状況を考える基本資料となるように心がけるとともに、代表的な偈頌遺例80余点を精巧な拓本写影によって掲げ、その宗教的美の形姿を紹介している。硬い石に彫りこんだ偈頌文字の美しさは比類ないものである。石造美術研究に生涯をかけた川勝政太郎博士最晩年の講述。
【目次】 第一編 法華経 第二編 阿弥陀信仰系経典 第三編 その他の経・論 第四編 大徳の偈ほか 第五編 出典未詳のもの
【著者紹介】 川勝政太郎(明治38・1905~昭和53年) 京都生まれ。京都大学文学部史学科考古学選科にて天沼俊一博士に師 事、石造遺品への関心を深める。昭和5年に25歳で『史迹と美術』誌を創刊、主宰する。戦時一年間の休刊を除き、逝去まで調査と研究・執筆、編集の仕事を 持続し通した。その膨大な事績と業績は歴史考古学、ことに石造美術研究においてほとんど独力でこの新たな研究分野をきり拓き、比類ない足跡を残した。昭和33年に『日本石材工芸史』を主論文として文学博士の学位を受ける。大阪工業大学、大手前女子大学の教授を歴任、昭和53年12月に逝去。主著に『石造美 術』『日本石材工芸史』『大和の石造美術』『京都の石造美術』『日本石造美術辞典』その他がある。その膨大な著作の目録は『歴史考古学』第十一号「川勝政 太郎先生著作目録」に納められている。