考古学系/美術造形・美術史
独立行政法人文化財研究所 東京文化財研究所 文化遺産国際協力センター 【編】 ISBN: 9784862090133 [B5判並製]334p 26cm (2007-03-31出版) 定価=本体6476円+税
◎破壊や風化によって危機に瀕するユーラシアの壁画美術。この美しき遺産を保存・修復し、秘められた東西交流の実相を究明するため、各国の人文科学と自然科学、第一線の壁画研究者がつどった国際研究の成果。 ◎シルクロードの壁画には、東西の古代人が交易によって会い相互に影響しあいつつ創りだし華開いた、それぞれの地域に個性的な絵画文化の姿がみられる。 ◎エジプトブルー・ラピスラズリ・インディゴ・ハンブルー・群青など、青の美しい色材の交流・展開の解明にみられるように、顔料彩画の下地層など、表象を支える素材と技術の解明は、表現文化の交流や創造の内質的理解と深くかかわっている。 ◎これらの科学的追求はまた、世界各地で危機に瀕している壁画の保存と修復の基準を作り出すための不可欠な課題である。
【目次】 ◆Ⅰ 壁画美術とその交流史 トランスコーカサスにおける壁画(D・パーク) サマルカンド出土「使節の壁画」に関する最新の研究(F・グルネ) シルクロードの壁画(前田耕作) インドから見たシルクロードの壁画(宮治昭) 中国の仏教壁画(岡田健) 中国の古墳壁画(百橋明穂) 高句麗古墳壁画にみられる中国と中央アジアの関連について(キム・リナ) 中央アジアの壁画の放射性炭素年代と美術史編年の比較(岩井俊平) 日本の壁画美術(渡邊明義) ディスカッションI:文化交流の諸相(伝播・受容・変容・創造) ◆Ⅱ 壁画製作技法の波及:材料と絵画技法 仏教伝来前後の日本で用いられた顔料の特徴について(朽津信明) グレコ=ローマ時代における絵画材料の異文化間交流と交易(I・カクウリ) 中央アジアの壁画における膠着材および顔料に関する科学的分析(A・コソラポフ K・カリニーナ) 流出文化財バーミヤーンの仏教壁画片に関する材料と絵画技法の非接触調査 (籾井基充/関博充) インドにおける石窟壁画の彩色技法および材料とその保存について(R・K・シャルマ) 中国西域における古代壁画技術に関する包括的調査(馬濤ほか) 敦煌莫高窟における壁画材料と技法(王旭東/傅鵬) ディスカッションII:シルクロード地域の壁画材料と絵画技法 ◆Ⅲ シルクロード周辺地域における壁画保存の現状と課題 高松塚古墳壁画の保存と現状(三浦定俊) 日本における壁画保存の歴史と現状(三浦定俊) 韓国国立中央博物館所蔵中央アジア将来壁画の保存処理 (カン・ヒョンテ/キム・ヨンミ) バーミヤーン仏教壁画の保存とその課題(谷口陽子) 遺跡から出土した壁画の保存と修復(A・ブリアヘールほか) 中国西域および敦煌莫高窟における壁画保存について(王旭東) 高句麗古墳壁画の自然科学的分析調査について(R・マッツェオほか) 壁画保存の歴史:現状と課題(S・カーター) ディスカッションIII:壁画保存研究の課題と展望 シンポジウム ディスカッション:シルクロードの壁画:そしてその保存とこれからの課題