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美術造形・美術史/ 表象交通論

シャシンシュウ「ユキノヤクシマ」

●写真集「雪の屋久島」


写真集「雪の屋久島」 新井靖雄 アライヤスオ【著】
ISBN: 978-4-86209-082-9 C1072
¥3800E
[A4変形判上製]本文112頁
 28.2cm×23.1cm
収録モノクロ写真
 /ダブルトーン印刷:70点
写真構成:新井靖雄・島尾伸三
文:山口峯生・清水武司・
 島尾伸三・新井靖雄
印刷:光村印刷
(プリンティング・ディレクター
 川崎智徳)
(2020-11-1出版)
定価=本体3800円+税

■数千年の縄文樹叢、億万年の山と岩のすがた。南の島の山巓に雪が降りたち、見たこともない自然世界の実在が露わとなる。■山岳写真家・新井靖雄が15年にわたり、たった一人で挑んだ、厳寒の屋久島。■その荘厳の風光と形姿を、モノクロ写真/ダブルトーン印刷でみごとに定着させた写真集。





山口峯生氏「序にかえて」より
「本写真集は、著者が時には過酷な自然環境に身を置いて自己をみつめ、五感を研ぎすまし、循環し変化する屋久島の自然との一体化を意識し、自然の光と影を巧みに活かした白黒写真特有の心にしみる幽玄な景観、 宇宙に広がる屋久島の自然を活写した作品で構成されており、著者が自然と真摯に向き合った証かつ結晶であり、屋久島の自然を愛し、敬う気持ちを象徴していると思います。」

清水武司氏文より
「秩父の名峰武甲山の登山道である橋立川の丸木橋が昨年(令和元年╱2019年)秋の台風で流されました。 先日素晴らしい丸木橋が架けられました。予算も無く全てボランティアで材料手配や専門知識を持つ山仲間十数人を集め、昼には豚汁を振る舞い、素晴らしい丸木橋を完成させた人物が山や写真仲間から「やっさん」と 親しみを込めて呼ばれている新井靖雄さんです。」
「今から十数年程前、新井さんが屋久島を撮影したいと話しに見えたのは、新井さんが定年を半年後に控えた頃だったと記憶しております。」
「私は生意気にも先輩である新井さんに中途半端に屋久島を撮影しても意味が無い、屋久島は世界中からカメラマンが訪れそれぞれの視点で素晴らしい作品を発表している、時々訪れて風景写真を撮影する位なら、その力を定年で思う存分時間が取れる、今こそ秩父の山々や人々の暮らしを撮影したほうが良いと話した記憶があります。」
「しかし新井さんは、今まで発表されている屋久島の写真は屋久杉等で知られ標高でいうと低い半分が殆どで、九州以南で最高峰の山があり、頂上には雪も降り人を寄せ付けない厳冬期の屋久島の山々を撮影して発表したい、谷川岳や北アルプスで習得したロッククライミングや厳冬期の登山の経験を生かして雪の屋久島を定年後の仕事として撮影したいと話しました。十代からの付き合いで頑固で言い出したら曲げない性格を知っておりましたので出来る限りのお手伝いはすると話した事を記憶しております。」
「写真家全般に言えることですが、ここぞとおもう瞬間は我を忘れ被写体のみに集中してしまいます。新井さんはこの一瞬をとらえるべく十数年厳冬期の屋久島に通い続け命を懸けて撮影した事が、フィルムを通してひしひしと感じられました。その写真は、辛うじてプリントできるフィルムから今回発表されております。2百数十枚の写真の中から新井さんが写真集に掲載する作品を70点ほど厳選致しました。モノクロの階調を巧みなテクニックで表現したそれぞれの写真は驚嘆いたします。新井先輩が定年後の全てを掛けて撮影した雪の屋 久島が、世界遺産屋久島の新たな視点として評価されると信じております。」

島尾伸三氏文より
「自然を実存と言い換えても良いとするなら、撮影者の意識が実存と真っ向から対峙するが故に、写真集『雪の屋久島』は南島の屋久島がいかに奇妙な自然を山頂部に戴いているかの知見を与えてくれるだけでなく、撮影者の目を借りて、この写真集を見るものの精神を代理体験を越えた形而上の時空へ彷徨わせます。信じ難い様相の特殊で奇妙な自然に目が奪われるばかりでなく、撮影者が地上に両足で立っているということさえ不確かに思わされてくる上に、彼の魂が風に乗って飛び回っているのではないかという不安に誘い込ま れるまでに錯覚させられていくのです。実存の暴力に巻き込まれながら凝視する撮影者の内面に、あるいはその背中に乗せられた我々は、彼と同じおののきと目眩を体験させられてしまうのです。」
「モノを見つめることが撮影者の第一義であるとするなら、対象が精神世界であろうと社会的風景であれ、たとえ大自然であっても、撮影後の画像の再加工やデフォルメ(変形や歪曲)を良しとしない、写真集『雪に屋久島』 のようなストレートフォトグラフィーなら尚更に、実存と対峙する強い精神力を必要とするはずです。撮影意図という欲望に歯向かうことなく応えてくれる対象であるならまだしも、空、海、山、川、野生する生物群などヒトの意思の及ばぬ実存は、撮影者がどう画策しようと、手に負えるものではなさそうだからです。それらはむしろ時空を超えてヒトを翻弄してきた地球上の実存そのものだからです。」
「物の怪に取り憑かれたかのように、ストレートフォトグラフィーの域を脱することなく、つまりは小細工なしで実存を相手に真っ向からに立ち挑む勇猛な写真家というものを私は新井氏に見るのです。」


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【目次】
〈表1〉 雪の大岩壁・永田岳 〈表4〉 エビのシッポ
〈文〉
序文にかえて 山口峯生(元秩父宮付宮務官・日本山岳会会員) 2-3
新井靖雄のネイチャーフォトについて 島尾伸三(写真家・写真評論) 5-6
新井靖雄さん 清水武司(埼玉県立近代美術館ファムス会長・秩父山岳連盟会長)
54-55

雪の屋久島 撮影あれこれ 新井靖雄 84-95
収録写真ノオト 新井靖雄 106-109
お世話になった方々 112
〈写真構成〉
扉  1
1章 7-37
2章 39-53
3章 57-62
終章 97-105

【著者紹介】
新井靖雄 Arai Yasuo
昭和21(1946)年11月1日、秩父生まれ。山岳写真家の清水武甲に師事する。山岳写真を撮り続け、『奥秩父の四季』(2002年刊)、『奥秩父・ダムで移転した人々』(2007年刊)などの写真集を刊行。現在、秩父山岳連盟副会長。

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