身体の思想/信と倫理の根源へ/ 文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/ 精神分析・心理・カウンセリング学系/哲学・神話・宗教系
ガナナート・オベーセーカラ Obeyesekere,Gananath【著】 /渋谷利雄【訳】 ISBN: 9784905913276 [四六判上製]350p 20cm×14cm (1988-03出版) 定価=本体2500円+税
スリランカの大巡礼地カタラガマに集う女・男苦行者の人生を描きつつ、人が生きることの奥行と深さをみごとに伝えてくれる《美しい物語》ともなっている。
【目次】 Ⅰ=私的シンボルと公的シンボル/問題の所在/女性苦行者ともつれ髪/三人の女性法悦行者/毛髪の意味(ヨーギと僧侶:シヴァと仏陀、もつれ髪と剃髪、社会制度と無意識、もつれ髪と剃髪の心理的シンボリズム、パーソナル・シンボルの習俗化) Ⅱ=霊魂の闇夜/ジュリエットのディレンマ:仏教的な禁欲主義あるいはヒンドゥーの敬虔主義/罪のシンボル化/パーソナリティーの象徴的統合 Ⅲ=間個人的な相互作用とパーソナル・シンボル/神話モデル/コミュニケーションと疎隔感/意味のネットワーク/幽霊、悪霊と深層の動機づけ Ⅳ=墓穴への下降/主観的形象:シリマの個人史の解釈/黒王子との密会:夢魔と火渡り行者/カタラガマの鉤釣り行者/アブディンの儀礼活動に対するコメント/アブディンの墓穴への下降/カーリ女神の儀礼/アブディンの舌/幻想、パーソナル・シンボル、主観的形象 Ⅴ=主観的形象と文化の創造/文化と無意識/神話のモデル
【著者紹介】 ガナナート・オベーセーカラ(1930年~) スリランカ生まれ。1956年、セイロン大学で 英文学学位。1964年、ワシントン大学でPh.Dを取得。66年、ワシントン大学人類学科助教授。68年、セイロン大学社会学科教授。72年、カリフォルニア大学(サンディエゴ)人類学科教授。80年より、プリンストン大学人類学科教授。マックス・ウェーバーの文化理論にフロイトの精神分析学を導入した独自の心理人類学を創りだし、みずからが育ったスリランカ伝統社会の文化変容の姿を生き生きと描きだしている。パッティニの祭祀にかんする大著をはじめ、多くの著述があるが、まとまった著作の邦訳は本書のみ(重要な論文訳として、「食人種としてのイギリス人―探検家ジェームズ・クックの死と再生に至る出来事の考察」〈中村忠男訳/『みすず』1993.11号〉がある)。
【書評】 (三好正人/LATINA 1988.1号) 「人類学者の著者は、スリランカのシンボリズムを独特の方法で分析してみせる。…個々の事例をその人の生い立ちや内面にまで踏み込んで検討し、それが社会にどう関係付けられていくかを明らかにする。…もつれ髪のシンボリズムがそうであるように、シンボルの多くは個人の内面と文化の両方に根を下ろしている。特異な経験を生きていこうとするなら、何らかの方法で、集団に適応するすべを見いださなければならない。その役割をシンボルは担う。人はシンボルによって自らの経験を文化的に意味付け、客観化する。そしてすでにあるシンボルを主観化し、新たな意味を付加しながら、文化の変動を能動的に生きることさえ、実は可能なことなのだ。」 (鈴木正崇/朝日ジャーナル 1988.6.10号) 「本書の魅力は、まさしく女性の法悦行者の苦難に満ちた生き様の語りにある。…エクスタシーや夢の中で親族関係は死霊として現れ、それを善なる存在に転換すると共に神の召命を受け、苦悩する人間は一転して人々の悩みを治癒する者に変貌し、自立する」