中国文化の深層へ/考古学系
土居淑子 ドイトシコ【著】 ISBN: 4905913519 [A5判上製]354p 21cm (1995-02-26出版) 定価=本体7718円+税
古代中国青銅器・画像石に描かれた神話図像の解明は、先史・古代アジアの生死観、世界像に遡って現代を問うときに、きわめて大事な手がかりとなる。著者は美術史の分野から、このような問いを秘めつつ、古代中国研究に新たな地平を拓く数々の試行をおこなってきた。本書は、試み半ばに逝った著者の主な論文を集成し、半開の扉の前に佇みつつ、その深奥を触知しようとした者の思考を継承しようとするものである。
【目次】 饕餮文について/古代中国における樹木と人物図/古代中国の動物図像/秦漢の考古美術―新発見の遺跡から/河南唐河針織厰画象石墓/舜伝説をめぐって/二、三の漢代画象の題材について/武氏祠画像石「水陸交戦図」の一解釈/古代中国の半開の扉/『歴代名画記』にあらわれた西域系画人の画風について/洛神賦図と顧愷之/あとがき(前田耕作)
【著者紹介】 土居淑子(1935~1994年) 東京生まれ。1958年、早稲田大学文学部史学科東洋史専攻卒業。67年、早稲田大学大学院芸術学科美術史専攻博士課程終了。1970~77年、成城大学短期大学部助教授。80年、早稲田大学にて文学博士取得。1977~94年8月、成城大学短期大学部教授。バ ーミヤーン石窟調査、バローチスターン調査、山東省仏教美術調査などに参加。著書として『古代中国の画像石』、訳書に『トルファン考古記』などがある。94年8月死去。その 人柄と仕事については、前田耕作「中央アジアへの夢を歩く」(『古代文化』第51巻第 9号、1999年9月)に詳しい。
【書評】 (大林太良/週刊読書人 1995.5.20号) 「古代中国の画象石の研究で知られる土居淑子氏は、考古学、美術と宗教、神話などの側面から古代中国文化についてすぐれた成果をあげた。…著者の独自の学風がよく表れているのは、やはり中国神話を美術のほうから光を当てた論文であろう。『舜伝説をめぐって』はその代表的なものである。…この二つの危機脱出は、火、水をくぐりぬけるという行為で、舜が帝位につくためのイニシエーションにほかならないという。…従うべき見解であろう。…土居氏の研究で面白いのは、時代による宗教観念の変化を鋭く捉えていることである。…」 (北 進一/週刊読書人 1995) 「『古代中国の半開の扉』では、…著者の古代中国に対する歴史観、〝土居史観〟が顔を覗かせている。中国各地で出土した画象石に表現された半開きの扉は、西方の墳墓装飾のイメージとも関連するアジアさらにはユーロアジア全体の死生観、世界像で語られるべきであると著者は結ぶ。そのメッセージは、若き日に中国西北部から広がる世界を夢見た著者の生きざまの結実であり、さらには死にざま(再生)をも暗示し、我々後進の研究者へと問いかける。」