現代社会・制度
越智道雄 オチミチオ【著】 ISBN: 0030-1021-2020 [四六判上製]257p 19.4cm (1986-01-10出版) 定価=本体1800円+税
著者は、このアメリカの現在を多彩な情報の丹念な蒐集からはじめて、その沸騰する動態を見事に描きだす。
【目次】 1 八〇年代前半のアメリカを旅して エスニック文学の現況/アメリカ社会に入り込みつつ敗者となる/日系アメリカ人俳優と肉体/リトル・トーキョー、そして日系ハワイ移住百周年/紋切り型少数民族像を修正する動き/教科書に現れた女性像修正にも連動/神は両性具有者か?/保守派の反発/社会・経済的安定に走る中心過激派/“寛容ごっこ”で対抗する白人保守勢力/文化の活力を奪う社会的な寛容仮面 2 ステップファミリーの衝撃 「生物的家庭」からはみ出した人々/初婚後よりも高い再婚後の離婚率/全米ステップファミリー協会/見直され出した「祖父母養育」 3 ロト父娘の憂鬱な午後 近親相姦家庭のダイナミックス/WASP鬱屈の午後/スキンシップ忌避と近親相姦忌避/あぶり出されてきた“性的虐待の連鎖”/性的虐待急増の原因は?/幼稚園長らが170名の園児に性的虐待 4 “大家族アメリカの巻き返し” セントルイスの公園で/経済界からのカウンターカルチャー攻撃/70年代に保守化深めた浮動的リベラル派/10代連続自殺事件の多発/「全く新しいタイプのリベラリズム」の後退/巧妙な保守派の対リベラル派戦略/世論調査も示すアメリカの保守化/保守系にとって替わられつつある政治評論界/「女性運動」に反対する女性活動家/テレビを駆使して進出する説教者/信仰をめぐる“神学的漂流現象” 5 “砦社会”に取り込まれる課程 離婚裁判の法廷で/民間委譲された警察権の大きさ/“砦社会”を楽しむゲームが大はやり/核武装は“砦社会”最大の外延化だ 6 “統合国家”への抵抗 シカゴ市議会戦争/南部に集中する黒人政治家の台頭/着実に進む政治のエスニック化/アジア系もせめて一例だけ、景気のいい話/では白人側のリベラルな政治的活力はどうなっているのか? 7 はみだしアメリカの突破口 エトスの変容/被差別民族集団の潜在能力開発へ/雇用推進運動への反撃/人種統合の一つの試み「磁石学校」/ヒスパニックの場合/新移民法をめぐる攻防/白人側の極右対応はむり/少数民族系住民への精神的治癒策 8 あとがきに替えて―1985年の主な動き 保革派の禁書合戦は相変わらず続く/白黒統合維持運動のその後/ステップファミリーの新対策一例/性的虐待二大事件がいずれも立件できなかった/犯罪率のさらなる低下と10代自殺のその後/フォルウエル師と南ア問題/農場倒産続出で中西部に極右サバイバリストが台頭/進学・雇用推進運動への反撃その後/磁石学校のその後/シカゴ市議会戦争のその後/新移民法の途中経過
【著者紹介】 越智道雄(1936年~) 愛媛県今治市に生まれる。広島大学大学院文学研究科博士課程終了。玉川大学助教授、明治大学教授を経て、2007年退職。同大学名誉教授。英語圏新世界諸国の比較文化研究。1978~79年シドニー大学客員研究員。日本ペンクラブ理事、日本翻訳家協会評議員、オーストラリア・ニュージーランド学会会長などを歴任。著作・訳書多数。