信と倫理の根源へ/現代思想/ 精神分析・心理・カウンセリング学系
アンジュー,アニー Anzieu,Annie【著】 /高井邦子・岩見祥子【訳】 ISBN: 9784905913559 [四六判上製]273p 19cm (1996-01-18 出版) 定価=本体3200円+税
女であることの〈いのち〉をどのように表現できるのか。〈母さん人形の無意識〉〈ペニスの体内化〉〈生命の空洞〉〈貯留〉〈穴〉〈通路〉等など、女性の内部生命を〈内なる乳房〉のふくらむ痛みのように語りつづける精神分析的知のエッセイ。女性のいのちの表現活動は、〈受胎と生誕と再生の隠喩〉とパラレルにはたらいている。
【主な目次】 第1部 女性(フロイトの後、女であること;嵌めこみ;マゾヒズム;否定性と女性―特性のない女) 第2部 エクリチュール(言葉と女性;存在と行為) 第3部 女性分析家(肘掛け椅子に坐った精神分析医;分析者のことば;精神分析医であること)
【著者紹介】 アニー・アンジュー(1924年~) フランスのクレルモン・フェラン生まれ。哲学を修め心理学と言語再教育(言語障害治療)の学位を取得。子どもの精神分析心理療法による治療に従事、1989年までサルペトリエール病院児童青年部精神分析医長をつとめた。1985年に「子どもの精神分析のための協会」を設立、会長としてドルト亡きあとの「子どもの精神分析」を代表する分析医として知られる。夫のディディエ・アンジューとの出会いはエコール・ノルマル時代に遡り、共に哲学と心理学を修める。
【書評】 (稲田奈緒美/図書新聞 1996.4.20号) 「著者は、『女性の特質は、不可視の肥沃な内部によって構成されている』とし、従来の『男根モデル』ではなく『女性の内部性のモデル』を採用する。『内部』とは、生と死の力を備え、官能の源泉である空洞。欠如でもなければ、子宮のみに還元されるものでもない。『女性は、この内部と外部との相互作用によって作られ』るものである。」 (河野信子/産経新聞 1996.4.21) 「これまで、女性学の内部には……展開のために設定するべき、初期条件を、未明のなかに放置したままであった。この未明の領域が、本書によって、初期性を得たということができる。……『欠如の理論』も『両性具有』も停滞を生む。……女の本能領域にアンジューは果敢に分析のメスを入れたのである。」