表象交通論/身体の思想/現代思想/ 精神分析・心理・カウンセリング学系/現代社会・制度
アンジュー,ディディエ Anzieu,Didier【著】 /榎本 譲 エノモトユズル【訳】 ISBN: 4905913683 [四六判上製]518p 20cm (1999-10-10出版) 定価=本体4175円+税
市民グループ、政治集団、会社集団から心理セミナーやカルト宗教教団まで、どんな人間集団にもひきおこされる諸幻想とその循環に自覚的であることがいまとても切実な課題といえる。 原書初版は1975年に刊行され、集団心理学研究の古典として高い評価を受け、各国語に翻訳されてきたが、邦訳はなかった。本書は1984年刊の第2版をもちいてはじめられたが、著者の要請にもとづき1999年刊行の第3版に準拠した追加・訂正をおこない、ルネ・カエスの第3版序文をも巻末補遺として加え、はじめての邦訳として出版した。なお、邦訳として『分析的心理劇』(篠田勝郎訳、牧書店、1965年)があるが、現在は絶版。
【主な目次】 序 集団の想像界、集団の局所論的構造および幻想の組織化 第一章 集団状況における精神分析技法とその規則 第二章 集団における想像界 第三章 集団と夢との類似性 第四章 集団イリユージョン―共同の理想自我 第五章 集団とは口である―集団における口唇性の幻想表象 第六章 解体幻想 第七章 集団=機械の幻想、あるいは誘惑者=迫害者としての集団 第八章 逆説的抵抗―集団の自己破壊 第九章 集団、父のイマーゴおよび〈超自我〉 第一〇章 集団における幻想の循環にかんする一般理論
【著者紹介】 ディディエ・アンジュー(1923~1999年) パリ近郊のムラン生まれ。1945年、エコール・ノルマルに入り、48年に哲学教授資格試験に合格。パリ大学心理学研究所の過程を終え、1957年に『フロイトの自己分析』で文学・人文科学博士号を取得。この論文は1988年に大幅な改訂による版が刊行され国際的に高い評価を受けている(邦訳は未刊、岩切正介の部分訳が『飛行』24号〈1991年春、ガーデン会〉にあり)。1964年にパリ大学ナンテール校の心理学教授に就任、83年に退官、99年死去。 ラカンの学位論文『人格との関係からみたパラノイア性精神病』中の著名な症例としてしられる「エメの症例」はアンジューの母の症例であった。アンジューは師ラガシュとともにラカンを「導きの糸となった人」としてあげているが、はじめ二人はこの事実を知らなかった。のちラカンとは離反し、フランス精神分析の一つの流れをつくった。アンジューの精神分析は、フロイト理論の初期からの再構とともに、メラニー・クライン、ウィニコット、メルツァー、ビオンなど、英国のクライン学派により親近する立場から独自な理論を構築している。
【訳者紹介】 榎本 譲(1946年~) 横浜市立大学心理学科卒。パリ第八大学哲学科DESU(修士)取得。東京都立大学大学院博士課程(仏文学専攻)、単位取得。 訳書: M・マリーニ著『ラカン―思想・生涯・作品』新曜社、J=D・ナシオ著『精神分析7つのキーワード』新曜社、F・ドルト著 『無意識的身体像①②』 言叢社、ほか。