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既 刊

表象交通論/現代思想/文学

ジョイスノワナ―『ダブリナーズ』ニハマルホウホウ

●ジョイスの罠―『ダブリナーズ』に嵌る方法

ジョイスの罠 金井嘉彦 カナイヨシヒコ・
吉川 信 キッカワ シン【編著】
【共同執筆者】小島基洋・桃尾美佳・
奥原 宇・滝沢 玄・ 丹治竜郎・ 田多良俊樹・
横内一雄・南谷奉良・坂井竜太郎・
小林広直・戸田 勉・ 平繁佳織・木ノ内敏久・
中嶋英樹 ・河原真也・吉川 信・金井嘉彦
ISBN: 978-4-86209-058-4 C1098
[四六判並装]本文440p 18.8cm
(2016-02-02出版)
定価=本体2800円+税

§すべてはダブリンから始まった。
20世紀最大の作家の世界へ、ようこそ。【『ダブリナーズ』出版100年記念論集』

執筆110年の〈視差(パララックス)〉で甦るジョイスの「ダブリン市民」像。
●英国支配下にあった110年前のアイルランド。そのとき、ダブリン市民はいかに生き、何に突き当たっていたのか。ジョイスはダブリン市民の何気ない日常の行動や事件を描くことで、何をとりだしてみせたのか。批評は、作家が描こうとした世界の秘密を、「太陽を見据える視力で」(ジョイス)描き出す。もはや理解しがたくなってしまった執筆当時の言語表現の内質を復元しつつ、作者さえ無意識だったかもしれない表現世界のありようを読み解く。戦後に行なわれたいくつもの批評理論の転換を踏まえながら、17人の批評家が結集し、ピアリーディングの手法により、日本ではじめて造られた『ダブリナーズ』批評論集。


【目次】

序 はじまりのジョイス
―『ダブリナーズ』 への誘(いざな)い 吉川 信
第一章 「姉妹たち」
 一九〇四年の「姉妹たち」、
あるいは一一〇年のパララックス 金井嘉彦
第二章 「遭遇」
 不思議の国の少年、そして彼がそこで
出遭ったもの―『不思議の国のアリス』の
変奏としての「遭遇」 小島基洋
第三章 「アラビー」
 「アラビー」の死角―blindnessをめぐって
桃尾美佳
第四章 「エヴリン」
 難を逃れたエヴリン
―フランク女(ぜ)衒(げん)説再考 奥原 宇
第五章 「レースの後」
   レースの「跡」
―「レースの後」の余計/予型論 滝沢 玄
第六章 「二人の伊達男」
 「二人の伊達男」における語り手と
登場人物の共犯関係 丹治竜郎
第七章 「下宿屋」
 ポリー・ムーニー、あるいは謀略のタイピスト
―「下宿屋」における大飢饉後の晩婚化社会と
女性の就労 田多良俊樹
第八章 「小さな雲」
 晴れのち曇り、所によって雨
―「小さな雲」の気象学 横内一雄


第九章 「複写」
 ゼロックス・メカニクス
―「複写」の機械式韻文 南谷奉良
第十章 「土」
 リアリズム批判で読む「土」
―「物語」は超えられたか 坂井竜太郎
第十一章 「痛ましい事件」
 亡霊の声に耳を澄ますこと
―「痛ましい事件」の憑在論的読解 小林広直
第十二章 「蔦の日の委員会室」
 一幕劇としての「蔦の日の委員会室」 戸田 勉
第十三章 「母親」
 舞台裏のArtisteたち―「母親」と音楽会評
 平繁佳織
第十四章 「恩寵」
 グレイス(“Grace”)のダブリン的受容
 木ノ内敏久
第十五章 「死者たち」(一)
 「死者たち」における亡霊の明かりと呼びかけ
―心霊主義を中心に 中嶋英樹
第十六章 「死者たち」(二)
 「死者たち」にみるカトリック中流階級の諸相
―ウェスト・ブリトン/大学問題/アイルランド西部 河原真也
第十七章 「死者たち」(三)
 死者たちの寛容―ジョイスの抒情のアポロギア 吉川 信
あとがき 金井嘉彦
引用・参考文献一覧
索引
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【編者・共同執筆者紹介】
●金井嘉彦(かない よしひこ)
  一橋大学教授。著書『ユリシーズの詩学』(東信堂、2011年)、『ジェンダー表象の政治学―ネーション、階級、植民地』(共著、彩流社、2011年)、『ジェンダーから世界を読むII―表象されるアイデンティティ』(共著、明石書店、2008年)ほか。
●吉川 信(きっかわ しん)
大妻女子大学教授。著書 ジェイムズ・ジョイス『ジェイムズ・ジョイス全評論』(翻訳、筑摩書房、2012年)、『歴史の悲歌が聞こえる―〈戦前〉としての今日』(共著、未来社、2007年)、『死と来世の神話学』(共著、言叢社、2007年)、J・G・フレイザー『初版金枝篇(上・下)』(翻訳、ちくま学芸文庫、2003年)ほか。

【共同執筆者紹介】
●小島基洋(こじま もとひろ)
京都大学准教授。著書・主要論文『ジョイス探検』(ミネルヴァ書房、2010年)、「午前八時二五分、妻のスリップ、最後に残された五十メートルの砂浜―村上春樹『羊をめぐる冒険』における〈再・喪失〉の詩学―」(京都大学『人間・環境学』第25号、2015年)ほか。
●桃尾美佳(ももお みか)
成蹊大学准教授。著書『幻想と怪奇の英文学』(共著、春風社、2014年)、『一九世紀「英国」小説の展開』(共著、松柏社、2014年)、『亡霊のイギリス文学』(共著、国文社、2012年)ほか。
●奥原 宇(おくはら たかし)
元専修大学教授。著書『英米文学論集』(共著、南雲堂、1984年)、マーガレット・ドラブル『風景のイギリス文学』(共訳、研究社、1993年)、A・N・ファーグノリ、M・P・ギレスピー『ジェイムズ・ジョイス事典』(共訳、松柏社、1997年)ほか。
●滝沢 玄(たきざわ げん)
法政大学非常勤講師。著書・主要論文『新自由主義は文学を変えたか―サッチャー以後のイギリス』(共著、法政大学出版局、2008年)、「砂山のモーセ―「プロテウス」と掟のテーブル」(Joycean Japan 第15号、2004年)ほか。
●丹治竜郎(たんじ たつろう)
中央大学教授。著書・主要論文『一九世紀「英国」小説の展開』(共著、松柏社、2014年)、「虫は無視できない―Clive Sinclairの ‘Bedbugs’ における語り手の二重化した自己について」(『中央大学文学部紀要』第255号、2015年)ほか。
●田多良俊樹(たたら としき)
安田女子大学准教授。著書・主要論文『幻想と怪奇の英文学』(共著、春風社、2014年)、「『ベルファストの贈り物』、あるいは大飢饉後のアイルランドにおける『魔女』―『土』の政治性を再考する」(『英文学研究』支部統合号第五巻、2013年)、“A Ghost That Cannot Speak Its Name: The Haunting Memory of the Great Irish Famine in James Joyce’s ‘The Dead.’”(『英文学研究』支部統合号第四巻、2012年)ほか。
●横内一雄(よこうち かずお)
関西学院大学教授。著書・主要論文「マリガンのヘレニズム考―『ユリシーズ』第一挿話における文化の政治学」(京都大学Albion復刊第55号、2009年)、「『自我の上へ亡命して』―『フィネガンズ・ウェイク』第一部第七章におけるシェムのメランコリックな幼年期―」(『英文学研究』第82巻、2005年)ほか。
●南谷奉良(みなみたに よしみ)
一橋大学言語社会研究科博士後期課程在籍。専修大学非常勤講師。主要論文「「プロテウス」における恐水と救出の風景―『ユリシーズ』にみる近代的動物としての犬―」(Joycean Japan第26号、2015年)、「終わらない文―ヒュー・ケナー『ジョイスの声』試訳、註解、試論」(首都大学東京・現代詩センター『論叢2011』2012年)ほか。
●坂井竜太郎(さかい りゅうたろう)
千葉工業大学非常勤講師。主要論文「ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』における歴史の問題をめぐって―第二挿話を中心に」(新英米文学会New Perspective第197号、2013年)、「テクスト論と女の解放―ジェイムズ・ジョイスにおける女の言葉をめぐって」(筑波大学比較・理論文学会『文学研究論集』第23号、2005年)ほか。
●小林広直(こばやし ひろなお)
早稲田大学文学研究科博士課程在籍。早稲田大学文学研究科英文学コース助手。主要論文 “Rereading “The Dead” as Ghoststory”(Joycean Japan第26号、2015年)、「ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の「テレマキア」における動物のイメジャリー」(『早稲田大学文学研究科紀要』第57輯、2011年)ほか。
●戸田 勉(とだ つとむ)
常葉大学教授。著書『日本独文学研究叢書〇六六 プラハとダブリン―二十世紀ヨーロッパ文学における二つのトポス』(共著、日本独文学会、2009年)、A・N・ファーグノリ、M・P・ギレスピー『ジェイムズ・ジョイス事典』(共訳、松柏社、1997年)ほか。
●平繁佳織(ひらしげ かおり)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程、ユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリン英文学研究科博士課程在籍。主要論文 “Named But Not Told: Dublin in the “Wandering Rocks” of Joyce’s Ulysses.” (東京大学大学院英文学研究会『リーディング』第32号、2011年)ほか。
●木ノ内敏久(きのうち としひさ)
新聞社勤務。著書・主要論文『ジョイスと視覚芸術―モダニズムの認識論的転回』(英宝社、2012年)、『比較文化のすすめ』(共著、成文堂、2012年)、『実像への挑戦―英米文学研究』(共著、音羽書房鶴見書店、2009年)、「文学と貨幣―ジョイス作品における父性」(早稲田大学英米文学研究会『ほらいずん』第四四号、2012年)ほか。
●中嶋英樹(なかじま ひでき)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校博士課程在籍。著書・主要論文 ピーター・バリー『文学理論講義―新しいスタンダード』(共訳、高橋和久監訳、ミネルヴァ書房、2014年)、“Forms of Attention in Ulysses.”(東京大学大学院英文学研究会『リーディング』第30号、2009年)ほか。
●河原真也(かわはら しんや)
西南学院大学准教授。著書『アイルランド文学―その伝統と遺産』(共著、開文社出版、2014年)、『亡霊のイギリス文学』(共著、国文社、2012年)、『二一世紀イギリス文化を知る事典』(共著、東京書籍、2009年)ほか。

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