表象交通論/西洋文化の起源へ/考古学系/ 美術造形・美術史
ギンブタス,マリヤ GIMBUTAS,MARIJA【著】 /鶴岡真弓【訳】【著】 ISBN: 4905913624 [B5判並製箱入り]324p 26cm (1998-07-08出版) 定価=本体7800円+税
ミノア文化・ギリシア文化の神々を育んだ新石器文化の中心《古ヨーロッパ》は、エーゲ海・バルカン半島 からドナウ河中流域・アドリア海地方・モルダヴィアなどにあった。収録された土偶(女神像や動物神像など)や土器図像は、縄文時代の土偶・土器図像を理解し、日本の新石器神話像を解読するにも不可欠の本となっている。
【主な目次】 第1章 文化的背景 第2章 図式主義 第3章 儀礼の衣裳 第4章 仮面 第5章 祭殿と小像の役割 第6章 宇宙生成論と宇宙論のイメージ 第7章 水の女王―〈鳥女神〉と〈蛇女神〉 第8章 生と死と再生の女神 第9章 多産女神と植物女神 第10章 イヤー・ゴット―蘇生を促す男神 結論 古ヨーロッパ文明の遺産 付 発掘地名とC14年代|挿図・写真カタログ|参考文献|業績目録| 解題:マリヤ・ギンブタスと東欧考古学(鶴岡真弓) 比較図像「〈古中国〉文化図像」
【著者紹介】 マリヤ・ギンブタス(1921~1994年) リトアニア生まれ。1942年、リトアニアのヴィルニウス大学で修士号取得。46年、チュービンゲン大学で博士号取得。49年、ドイツからアメリカに渡り、1950-55年ハーバート大学で研鑽を積み、55-63年まで同大で特別研究員となり講師をつとめ、63年にカリフォルニア大学先史考古学教授に就任。傍らカリフォルニア大学ロサンゼルス校付属文化史博物館先史・古代考古学学芸員、スタンフォード大学付属高等研究所・オランダ高等研究所の特別研究員などを兼務、精力的な研究・執筆活動をつづけ、その業績は、東欧考古学およびインド=ヨーロッパ語族の原郷クルガン文化・考古学の権威として高い評価を受けている。1968年には、ロサンゼルス紙のウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれてもいる。
【訳者紹介】 『ケルト/装飾的思考』(筑摩書房)で、日本で初のケルト芸術文化史の全体を紹介し、ケルト・ブームの火付け役となる。近年はケルト文明の誕生にもかかわる、ユーラシア文明の「装飾・デザイン」交流史を探求。日本の文様を、世界性の中に置き直す研究も進めている。著書に『ケルト/装飾的思考』ちくま学芸文庫・『ケルト美術』ちくま学芸文庫・『ケルトの歴史:文化・美術・神話をよむ』河出書房新社・『ジョイスとケルト世界』平凡社・『装飾する魂』平凡社・『「装飾」の美術文明史』NHK出版・『黄金と生命』講談社・『阿修羅のジュエリー』理論社 ・鶴岡真弓の本と講座NEWS ・多摩美術大学芸術人類学研究所
【書評】 (立花 隆/週刊新潮「私の読書日記」 2001.2.8号) 「ヨーロッパ文明のもととされるギリシア文明は突然に生まれたものではなく、この古ヨーロッパの新石器文明によってはぐくみ育てられたものなのである。…神格化された像のほとんど(九割以上)は、女神像であり、ギリシア神話のデメーテル、ペルセポネー、ヘカテーなどはこの時代にさかのぼることがわかっている。…図版がきわめて豊富。」 (前田耕作/図書新聞 1989.3.18号) 「『古ヨーロッパの神々』は怠惰な知にはいささか衝撃的な書だ。…ギンブタスは、東ヨーロッパにおける最近の発掘の成果と、従来の層位学的アプローチに加えて、放射性炭素の測定による分析法と年輪年代学の援用による誤差の修正という年代測定の革新によって、『古ヨーロッパ』という文化複合の独自な存在を証明したのである。…なによりギンブタスの独創は、その根拠地としての『古ヨーロッパ』を、単に旧石器の後期とプレ・インド=ヨーロッパ文化との間に介在した文化とせずに、両者の世界構造の解読にも新たな意味を投ずるきわめてポジティブな文化複合として捉えたところにある。」 (永沢 峻/「ビーナスの起源求めて」共同通信 1989.3) 「私たち日本人にも大きな刺激となるのは、ギンブタス女史の駆使している方法論が、日本文化の古層をなし、独自な造形世界を持つ縄文文化の遺物の解釈の手引きとなっている点である。」 (樺山紘一/『朝日ジャーナル』 1989.3.31号) 「たしかに、それら女神像がもつコンテキストの広範さと密度とは圧倒的だ。読み取りかたも安定している。ただし、この神像の多様性から、ただちに古ヨーロッパを母権社会と解釈するさいの性急さは、いかがなものであろうか。」