文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/ 哲学・神話・宗教系/ 西洋文化の起源へ/ 信と倫理の根源へ
檜枝陽一郎 ヒエダヨウイチロウ【編訳・著】 ISBN: 978-4-86209-078-2 C3097 [A五判上製]348頁 (2020-03-31出版) 定価=本体5200円+税
◆前著『中世オランダ語 狐の叙事詩』に続き、中世写本から印刷本への展開、印刷本成立に不可避に伴った「検閲」の様相、検閲を想定して組み込んだ、あるいは検閲によって書き換えを迫られた「物語構造の変容」を追究した著者の「狐ライナールト」物語研究の完成版。 ◆「語り」がもつ「無意識」と「意識」との葛藤は、「物語構造」の核心にかかわる。韻文写本に語られた「動物寓話」の物語では、狐ライナールト一族の「本然の悪」から発露する社会批判・教会批判が寓意的な無意識により自在に語られていた。しかし、新興の印刷文化に支えられた「民衆本」の登場では、この本然の無意識の表現は、「検閲」と「弾圧」を含む強制や出版者の自制により変容を余儀なくされた。とはいえ、この中世最大の動物物語は、印刷本により各国にわたる多様な展開とともに版を重ね、その核心を伝えて今日まで語りつがれてきた。 ◆前著『中世オランダ語 狐の叙事詩』の韻文写本『ライナールト物語』(15世紀第二四半期)、散文印刷本『狐ライナールト物語』(1479年)の完訳に続く本書では、民衆本『狐ライナールト』(印刷本、1564年)、『狐ライナールトあるいは動物の審判』(宗教にかかわる記事を排除した印刷本、1700年前後)等の完訳と合わせ、民衆本の印刷文化がいかに「検閲」を受けながら、変容を余儀なくされたか、王権と宗教権力のはざまで、当時の印刷文化がいかに展開したかを精緻に研究した「解説三篇」よりなっている。ちなみにいえば、民衆本『狐ライナールト』の印刷をプランティンに依頼したケールベルヘンは家宅捜索の3日後に逮捕され、保釈から数日後の1570年5月9日に死去した。『狐ライナールト』を出版してから4年後のことであった。 ■本書「はじめに」から 「本書の第一篇をなす民衆本『狐ライナールト』は、先行するこれら2作品、すなわち『狐ライナールト物語』と『ケンブリッジ断片』を継承して、1564年にアントヴェルペンの印刷業者であったペーター・ファン・ケールベルヘンが出版したものである。本文は『狐ライナールト物語』から採られる一方、章の見出しおよび教訓は『ケンブリッジ断片』を受け継いでいる。『ケンブリッジ断片』との相違点は挿絵がないことぐらいである。ただ、本文は大幅に短縮され、前作である『狐ライナールト物語』の52%弱の分量に過ぎない。物語の舞台もアントヴェルペンを中心に設定され、ドイツの地名はもはや登場しない。当時有数の国際商業都市であったアントヴェルペンの住民、それも若者が主要な読者であったのは間違いない。本書の解題では、ケールベルヘンの出版活動を詳しく論じて、民衆本『狐ライナールト』が有する意味合いを明らかにした。その大きな特徴は、フランス人ロベール・グランジョンが考案した独特の書体であるシヴィリテ書体を用いて活字が組まれていることにある。いわゆるスクリプト・タイプ(script type)と称する草書体活字で、当時は子供用の書き方の練習に使用された活字である。本書では、原本の写真を掲載して、その書体が実際どのようなものであるかを確認できるようにした。この書体を使用することには、じつは宗教的な目的もある。子供にとって読みやすい書体は、プロテスタント派に利用されて、学校での布教の一翼を担わされるという事実があった。解題では、16世紀当時の新教対旧教の対立と、両者にとって宣伝媒体としての書籍がもっていた役割を論じている。」 「ケールベルヘンは、シヴィリテ書体を所有しておらず、この書体を早くから購入していた同じアントヴェルペンの印刷業者クリストッフェル・プランティンに依頼して活字を組んでもらっている。そのプランティンは、民衆本『狐ライナールト』が出版されてから2年後の1566年に、今度は自分の印刷所から蘭語仏語対照の『狐ライナールト』を出版した。その序には、フランス語を学ぶ生徒用の教科書として出版したことが明記されている。プランティンはこの作品の独占印刷権および独占販売権、すなわち特認(オランダ語privilege)を取得したものの、アルバ公による検閲に引っ掛かり、蘭語仏語対照『狐ライナールト』は1570年に禁書目録に登録され、焼却処分とされた。16世紀に頻繁に実施されたカトリック派による書物の検閲について解題で詳述しておいた。」 ■「本書の第二篇をなす『狐ライナールトあるいは動物の審判』は、不穏当箇所を削除したのちに出版を許可された作品である。アントヴェルペンの印刷業者ヒエロニムス・フェルドゥッセンが一七〇〇年前後に出版したものである。しかしそれは、繰り返された重版の結果であり、もともとの原本は、一六二一年に成立したと本書は推定した。検閲官のマクシミリアヌス・ファン・エイナッテンの出版許可の署名は一六三一年一一月一五日付になされているものの、エイナッテンはすでに同年の六月二九日に死去しており、署名の日付は誤りである。解題で明らかにした通り、エイナッテンの目的は、『狐ライナールト』からできる限り宗教色を抜くことにあった。動物をキリスト教徒のように登場させること自体、教会への辛辣な当てこすりだとすれば、神学学士であったエイナッテンに残されていたのは、キリスト教徒のようには動物を登場させないという方法以外になかった。たとえば、物語は民衆本『狐ライナールト』では本文が「聖霊降臨祭のころの出来事であった。」と始まるのに対して、『狐ライナールトあるいは動物の審判』になると「動物たちがことばを話していた時代、五月のころの出来事であった。」と早くも文面が変更されている。ふつうは五月中旬から下旬に祝われるキリスト教の大祭である聖霊降臨祭を削除したかったのは明白である。エイナッテンの仕事ぶりはじつに厳格であり、物語からキリスト教関係の単語をほぼすべて削除ないし修正し、せいぜい神様や悪魔などの単語が日常会話のなかに何度か出現するぐらいになった。その意味で、エイナッテンの目的は達せられたと言ってよい。しかし、そうした検閲の結果、狐ライナールトを巡る物語に、二つの相異なる版が生じることとなった。検閲を経て宗教色が抜かれた、主としてベルギーで流通する版と、さほど検閲の影響を受けなかったオランダで販売されたバージョンである。善し悪しはさて措き、狐ライナールトを巡る物語は、中世いらい各時代の社会情勢に適応しながら今日まで生き延びてきたと言えよう。ヨーロッパ中世に起源をもつ数多くの民衆本が今日まで生き残れず、その多くが消滅したことを思えば、狐ライナールトは稀有の事例だと言えよう。」
【主な目次】 第一篇 民衆本狐ライナールト 読者のみなさんへ 登場動物一覧 第一章 ライナールトが王様の御前で狼やほかの沢山の動物たちから訴えられる 第二章 穴熊のグリムバールトがライナールトの一件を王様の御前で弁護し、狼がライナールトに働いたいくつかの悪事とその他の所業について狼を訴える 第三章 穴熊グリムバールトが兎のキワールトの訴えに対してライナールトを弁護する 第四章 第五章 第六章 王様がお歴々や諸侯たちと、どの程度またどんな方法で非情なライナールトを処罰するかを協議する。コッペの葬送が執り行われる 第七章 熊のブルーンがライナールトを王様の御前へ連れてくるという命を受けて派遣された次第、そしてライナールトによって騙された次第 第八章 ライナールトがブルーンを大歓迎して仰々しく招き入れた次第 第九章 ライナールトは蜂蜜があるはずの所へブルーンを案内して、それが彼には災難となる 第一〇章 樫の木に閉じ込められたブルーンが屋敷に住む人々から痛めつけられる 第一一章 ブルーンが王様の御前へ訴えに来る 第一二章 王様の御前へ参内するようライナールトを召喚するため、雄猫のティバールトが派遣される 第一三章 ティバールトがライナールトに騙され、その策略によって罠に掛かる 第一四章 第一五章 ライナールトが働いた一大狼藉の件で、ティバールトが王様の御前へ訴えに来る。グリムバールトがライナールトを宮廷へ連れてくるよう派遣される 第一六章 ライナールトは妻のアルメリーンに別れを告げ、ティバールトとともに宮廷へ向かう。その途中で懺悔をして、グリムバールトが赦免する 第一七章 ライナールトは懺悔を続けて、どのように狼を騙したかを告白する 第一八章 ライナールトがどのようにイセグリムをもう一つ別の災難に遭わせたかを語る 第一九章 ライナールトの懺悔を聴いたグリムバールトが彼に懲罰を科して赦免する 第二〇章 グリムバールトとラインケンは一緒に宮廷に向かうものの、その途中ラインケンは普段の生き方をなかなか止められません。 第二一章 ライナールトが王様の御前へ参上して恭しく挨拶をして、誰もが自分を訴えているのを察知する。 第二三章 王様がライナールトを逮捕して木に吊って絞り首にすべしと判決を下す 第二四章 ライナールトが絞首台に連れて行かれ、そんな状況でも大仕掛けの策略をめぐらせる 第二五章 ライナールトが梯子の上ですべての罪業について公に懺悔する 第二六章 ライナールトが甘言を弄して王様とお后様に大いに働きかけ、王様と話しをするために梯子から降ろされる 第二七章 ライナールトが王様の元にやってきて、悲嘆しているふりをする 第二八章 ライナールトが自分の父親や何人かの友人も提訴し、自分を王様に告訴した者たちも痛めつける 第二九章 王様と女王様は、ライナールトを別に呼んで話しをして、財宝のありかを教えてくれるように頼む 第三〇章 王様が公にライナールトの悪事をそっくり赦して、彼やその友人、親族全員を例外なくみなが尊敬するよう命じる 第三一章 ライナールトが王様から無罪放免されるやいなや、狼と熊が逮捕される 第三二章 イセグリムとその夫人の靴が脱がされ、ライナールト用にブルーンの皮の一部が切り取られる 第三三章 ライナールトが巡礼の旅に出るために、王様に暇乞いをする。巡礼の旅を成就させるために、王様はベリーンに、巡礼杖と巡礼袋をライナールトに手渡すように命じる 第三四章 雄羊ベリーンがライナールトに巡礼杖を渡して、首に巡礼袋を懸けてやる 第三五章 兎のキワールトがライナールトに家の中までついていき、それが彼にとって災難となる 第三六章 ライナールトが宮廷で彼に起こった出来事をすべて妻に語る 第三七章 ライナールトがベリーンに巡礼袋を手渡し、王様に送る二通の手紙だと言いくるめながら、その中に兎のキワールトの首を入れる 第三八章 王様がいる前でキワールトの首が巡礼袋から取り出され、そのことが哀れなベリーンの災難となる 第三九章 イセグリムとブルーンが牢屋から解放され、雄羊のベリーンとその一族および友人全員が彼らの手に委ねられる 第四〇章 烏のティーセリンと家兎のラムプレールがライナールトを提訴するため王様の御前へやって来る 第四一章 家兎のラムプレールもライナールトを提訴しに王様の御前へやって来る 第四二章 王様が、ふたたびライナールトに対してなされた重大な告発に激怒し、マルペルデュースを破壊してライナールトを木に縛り首にしようと企てる 第四三章 穴熊グリムバールトがライナールトの元へ急行し、彼に警告して、すぐに宮廷に来て無実の主張をするように助言する 第四四章 ライナールトが再度グリムバールトとともに宮廷にやって来る。道中でふたたび、とくにブルーンとイセグリムにおこなったことを懺悔する 第四五章 ライナールトがグリムバールトとともに王様の御前へ現れる 第四六章 ライナールトに対して申し立てられたことについて、王様とライナールトが長く話し合う 第四七章 ライナールトが、ラムプレールに働いたと言われていることについて弁解する 第四八章 ライナールトが、烏のティーセリンの件で告発された内容について弁解して、叔父である司祭のマールテンが彼にどんな助言をしたのかを王様に語る 第四九章 司祭のマールテンが、あらゆる敵から解放されるようにライナールトにもう一つの助言を与える 第五〇章 ライナールトが決闘を申し込んだのを聞いて、ラムプレールとティーセリンが宮廷を後にする 第五一章 王様がライナールトにその狼藉を語って聞かせると、彼が大いに恐れる 第五二章 オナガザルが王様の御前でライナールトを弁護して、それにより彼が少しだけ支持を得る 第五三章 ライナールトは過去に一度もしたこともないほどの嘘八百で王様を誑(たぶら)かす 第五四章 ライナールトが王様と女王様に宝石のもつ効能と価値を伝える 第五五章 ライナールトが女王様に送ったという綺麗な櫛の話をつづけ、こう語る 第五六章 ライナールトが美しく貴重な鏡とそこに描かれた物語について語る 第五七章 鏡にあるもう一つの驢馬と小犬の物語 第五八章 もう一つ別の雄猫と狐の物語 第五九章 狼と鶴の物語 第六〇章 ライナールトが、以前父親が年老いた王様リオンに病気の件で適切な助言をしたことを王様に語る 第六一章 ライナールトが王様に、かつて王様に示した礼儀について語る 第六二章 ライナールトが嘘八百によって多くの成果を上げ、王様が無罪放免して彼を宝石捜しに行かせる 第六三章 ライナールトがふたたび王様の御前で狼イセグリムから、イセグリムの女房に働いた狼藉の件で訴えられる 第六四章 ライナールトが申し開きをする一方、イセグリムの女房が別件を訴え出る 第六五章 さらに、ライナールトがイセグリムをオナガザルの洞穴に入らせた次第がここで語られる 第六六章 ライナールトの悪辣さにどんな方法でも対抗できないと見たイセグリムは、別に日取りを決めて決闘をするために彼に手袋を手渡す 第六七章 イセグリムとライナールトの激闘 第六八章 ライナールトが、自分よりはるかに強いイセグリムとの闘いに勝利する 第六九章 闘いに勝利したライナールトが高らかに勝ち誇りながら王様の御前へやって来て、たとえ話を語る 第七〇章 ライナールトが王様に暇乞いをして、妻のアルメリーンに会うためにマルペルデュースへ向かう 民衆本狐ライナールト・訳註 民衆本狐ライナールト・人名地名索引 第二篇 狐ライナールトあるいは動物の審判 序 登場動物一覧 第一章 王様リオンはすべての動物が宮廷に参集するように命じ、そこでライナールトがまずイセグリムによって訴えられる 第二章 穴熊のグリムバールトがライナールトの一件を王様の御前で弁護す 第三章 ライナールトがふたたび雄鶏カンテクレールによって、またその友人カンタールトおよびクラーヤールトによって訴えられる 第四章 王様がお歴々や諸侯たちと、どんな方法で非情なライナールトを処罰するかを協議する 第五章 ライナールトを王様の御前へ連れてくるために、熊のブルーンが召喚状をもって派遣された次第、そしてライナールトから鮮やかに歓待された次第 第六章 ライナールトは蜂蜜があるはずの所へブルーンを案内して、そこで彼は樫の木に挟まったまま痛打される 第七章 ブルーンが王様の御前へ訴え出て、王様の命令で雄猫ティバールトがライナールトの元に遣わされたものの、彼によって罠に掛けられる 第八章 ティバールトが王様にライナールトを提訴し、グリムバールトがライナールトを宮廷へ連れてくるよう派遣される。ライナールトはあらゆる自分の犯罪を、とりわけ狼イセグリムに鐘の鳴らし方を教えたことを話して聞かせる 第九章 穴熊グリムバールトはライナールトの悪事を聞いたのち、王様に対して彼を援護すると約束し、一緒に宮廷に向かった。しかしライナールトは悪事を止めない 第一〇章 王様の御前へ参上してライナールトは絞首刑の判決を受けるが、そこに到るまでに狡猾さを発揮する 第一一章 ライナールトが梯子の上に立ったまま自分の罪業を告白したのち、謀略によって絞首刑を免れる 第一二章 ライナールトが王様の元にやってきて、友人たちを訴えて敵を窮地に陥らせる 第一三章 ライナールトの策略でイセグリムとブルーンが逮捕される 第一四章 狼イセグリムの靴が(王様の命令により)脱がされ、ライナールト用にブルーンの皮の一部が切り取られる 第一五章 ライナールトが兎のルワールトと雄羊のベリーンとともに旅に出る 第一六章 兎のルワールトがライナールトの家の中までついていき、そこで彼によって天に召される 第一七章 ライナールトがベリーンに頭陀袋を手渡し、王様に送る二通の手紙だと言いくるめながら、その中に兎のルワールトの首を入れる 第一八章 王様がいる前でルワールトの首が頭陀袋から取り出され、そのことが哀れなベリーンの死に直結する 第一九章 狼イセグリムと熊ブルーンが牢屋から解放され、雄羊のベリーンとその一族および友人全員が彼らの支配に任される 第二〇章 烏のティーセリンと家兎のラムプレールがライナールトを提訴するため王様の御前へやって来る 第二一章 王様が激怒して、ライナールトを縛り首にさせようと企て、グリムバールトから彼は忠告を受ける 第二二章 ライナールトが再度グリムバールトとともに宮廷にやって来る。道中でふたたび、熊ブルーンと狼イセグリムにおこなったことを語る 第二三章 ライナールトがグリムバールトとともに王様の御前へ現れ、訴えられたすべてにみずから弁明する 第二四章 ライナールトが決闘を申し込んだのを聞いて、家兎のラムプレールと烏ティーセリンが宮廷を後にする。ライナールトは不安であったが、オナガザルのアルベドレイフに助けられる 第二五章 ライナールトは過去に一度もしたこともないほどの嘘八百で王様を誑(たぶら)かし、奇跡の宝石について語る 第二六章 ライナールトが美しく貴重な鏡とそこに描かれた物語について語る 第二七章 ライナールトが、王様に立派な行いを語り、宝石を探すために解放される 第二八章 ライナールトがふたたび王様の御前で狼イセグリムから、イセグリムの女房に働いた悪行の件で訴えられる 第二九章 決闘をするために、イセグリムから手袋が渡される 第三〇章 狼イセグリムと狐ライナールトの激闘とライナールトが勝利した次第 第三一章 闘いに勝利したライナールトが高らかに勝ち誇りながら王様の御前へやって来て、暇乞いをして家路に就く 読者のみなさんへ 出版許可 狐ライナールトあるいは動物の審判・訳註 狐ライナールトあるいは動物の審判・人名地名索引 解題 (1) 民衆本『狐ライナールト』 成立の経緯/内容の比較/脇役陣の消去/語り手による語りの削除/社会批判の削除 /教会批判の削除/ペーター・ファン・ケールベルヘンとその活動/『十二族長の遺訓』と『ダビデの物語』、ガブリエル・メウリーア、民衆本『狐ライナールト』 (2) 『狐ライナールト』と一六世紀の検閲 ヴォルムス勅令/ルーヴァン大学神学部と禁書目録/トリエント公会議の禁書目録/ アントヴェルペン目録、一五六九年、一五七〇年、一五七一年/民衆本に起こった二つの変化 (3)『狐ライナールトあるいは動物の審判』 成立時期/一六一四年問題/修正の具体的内容、(1)宗教色の脱色、(2)迷信および俗信の排除、(3)良俗の維持 (4) 書誌情報 解題・註 付録 『ケンブリッジ断片』の解説と全訳 参考文献 あとがき 訳者略歴
【著者紹介】 檜枝陽一郎 1956年、福岡県生まれ、現在、立命館大学文学部教授。 著訳書:ネリー・ナウマン 『山の神』(共訳)、 同『哭きいさちる神スサノヲ』(共訳)、 同『久米歌と久米』、 同『生の緒』、 エミール・バンヴェニスト『インド・ヨーロッパ諸制度語彙集Ⅰ・Ⅱ』 (共訳)、 『中世オランダ語 狐の叙事詩』(編訳・読解)、 スティグ・ヴィカンデル『アーリヤの男性結社』(共訳、以上、言叢社)、 『中世低地ドイツ語』(共著 大学書林)、 『オランダ語1500』(編著 大学書林)、ウルリヒ・アモン『言語とその地位』(共訳 三元社)などがある。