養育論(心の発達と病理)・福祉論
師 康晴 モロ ヤスハル【著】 ISBN: 48620910087 [A5判並製]336p (2003-02-20出版) 定価=本体1800円+税
◆障碍者の支援法が、大きな節目を迎えたいま、「一人ひとりのいのち」を受けとめるという基軸をぶらさずに、障碍者が自立すること。「地域に生きること」「仕事をすること」「遊ぶこと」「生活すること」を、障碍者授産施設の現場で思考し、実践したドキュメント。 ◆すぐれた福祉活動論、施設論、組織論であり、福祉にたずさわる人、たずさわろうとしてる人、スーパーバイザー、自治体の福祉担当者にとっても不可欠の本です。 ◆芹沢俊介氏推薦◆ 「絶対的な差別」の解消という福祉のめざすべき遠い道程を師さんが歩いている。がっし、がっしと。師さんがいるところ人が集まり、笑いが起こり、活気がみなぎる。師さんは障碍者を「お客さん」扱いしない。指導する対象として扱うこともしない。「いま・ここ」を共に生きる自分の仲間だと考えている。その徹底した肯定性において師さんのなかで絶対的な差別の解消が実現している。師さんの話を聞くと、自己に見切りをつけていた人が、おのれの内に眠っている潜在力を使い始める。師さんに会うと、福祉が真底魅力的に感じられて、うれしくなる。
【主な目次】 1章 出会い 2章 養護と教護 一、養護施設・美深育成園との出会い 二、教護院という構造 3章 子どもの意見表明を支持する――全国養護施設高校生交流会から 4章 地域に生きる福祉施設の範形を求めて――杜の会の実現 福祉法人を市民法人にすること/「忍辱」のお願いと「をみな」の覚悟/授産施設の在り方/授産種目の柱を「食」におく――料理家辰巳芳子先生との出会い/複合施設の設計/授産施設の現場から/智き愚人の仕事―― SELP・杜への道程/国際社会の中の横浜の福祉―〈不足〉の視点からの脱却 5章 絶対の差別の解消をめざして――SELP・杜の実践 一、施設開所の年を振り返る――措置制度の時代 はじめての工賃/治癒としての授産施設/ラーメン車出動/食の後始末/地域文化としての陶芸展/平等/商/一年を振り返る/急ぎすぎたことへの反省/「沖縄記」 二、「食」の仕事――介護保険スタートの年 「食」の仕事を通しての「共生」社会の実現/ 輝ける命・ハワイ/「農(土)」を通して「杜」の愚直さを考える/街の中にうどん屋をつくる/「不自由でも自分の力を出せば楽しく生きられる」/利用者の仕事への情熱はどこから生まれてきたか/それぞれの忘年会 三、よく働き、よく遊ぶをさらに充実させる 支援費制度の居宅支援費の重要性について/学校給食とSELP・杜の食品 四、支援費最後の年 経済局の空き店店舗事業とSELP・杜の第三分場/外部販売車「杜ちゃん号(Go!)」の役割/シンガポール旅行記 6章 知的障害者にとって自立とはなにか―― 「障害者自立支援法」に異議を唱える 「自立支援法」施行前の混乱/私たちの考える障碍者の自立/「自立支援法」までの障碍者福祉の歴史/「自立支援法」の特徴/就労の考え方(働く)/グループホームの考え方(暮らす)/余暇の考え方/「ノーマリゼイション」と杜の会
【著者紹介】 師康晴(1942~2011年) 群馬県生まれ。日本社会事業大学社会福祉学部社会事業学科卒業。群馬県小中学校教員を経て、社会福祉法人美深育成園(養護施設・北海道)副施設長・北海道立日吉学院(教護院)教護・横浜市立向陽学園(教護院)教護。横浜市戸塚福祉授産所所長。社会福祉法人開く会・共働舎(知的障碍者授産施設)施設長。日本社会事業大学木田(実践)賞受賞。1998年、社会福祉法人杜の会、SELP・杜(知的障碍者授産施設)施設長、ならびに理事長を経て2011年逝去。社会福祉法人試行会理事長、横浜市保護司、横浜市人権擁護委員、横浜市社会福祉審議会委員などを務めた。「かさまの杜保育園」も立ち上げた。