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既 刊

養育論(心の発達と病理)・福祉論

カゾクノサイセイ―ファミリーソーシャルワーカーノシゴト

●家族の再生―ファミリーソーシャルワーカーの仕事

家族の再生 菅原哲男 スガワラテツオ【著】
ISBN: 9784905913962
[A5判並製]318p
(2004-11-28/2008-4-8二刷発行)
定価=本体2381円+税

§「虐待」に象徴される家族の解体をいかに超えるか。
いまこそ家族・個人・社会の「養育力」が問われている。

☆「光の子どもの家」が長年にわたり取りくんできた、家族関係への実践と理論の参照枠を提示。
☆「養育」に関わるすべてのワーカーのための入門書。

【主な目次】
はじめに~ファミリーソーシャルワーカーとは何か
一章: 「社会的養護」とは何か1~民間児童養護施設と「法」との関わり
二章: 「社会的養護」とは何か2~「養育の社会化」をめぐって
三章: 家族と「家族の原型」~「解体」する家族像のなかで
四章: ファミリーソーシャルワーカーの仕事~児童養護施設の「家族との関わり」の原則
五章: 「光の子どもの家」の家族関係への取りくみ~「家族的処遇」と「家族との関係の保障」
六章: 児童相談所と児童養護施設のあいだ~子ども受け入れの姿勢について
七章: 真実告知をめぐって~「イノセンス」の解体
八章: ネグレクトと成長障害~家庭引きとりの困難さをめぐって
《コラム》 「光の子どもの家」のマザーたち
九章: 家族の再統合1~親の願い、子の願い、そして…
一〇章: 家族の再統合2~「後保護」の長い道を伴走して
一一章: 出発のためのジャンプ台としての家族~親を「見切ること」について
《コラム》 ワーカーへのことづて

【書評】
(梶葉子氏/図書新聞 2005.5.21)
「児童虐待の胸がつぶれるようなニュースに接するたびに、虐待を受けた子供たちはいったいどうやってその後の人生を生き抜いていくのだろうかと暗澹とした気持ちになる。 しかし、そうした子どもたちを引き受ける児童養護施設の内実は、ほとんど知られていないに等しいだろう。」「本書は、激増する児童虐待を受けて、新たに児童養護施設に配置されることとなったファミリーソーシャルワー力ー(家庭支援専門相談員)に携わる若い人々のために書き下ろされた一書であるとともに、85年に「光の子どもの家」を設立し、その施設長として長年児童たちにかかわってきた著者が語りかける渾身の「家族の再生」論である。」「施設に収容を余儀なくされる子どもたちは、現在の 変容した家族、崩壊した家族の関係の象徴とも言える存在だろう。ここで語られる「家族の再生」とは、同じ現在を生きる私たち自身が模索すべき「家族の未来」に他ならないのだ。」「97年の児童福祉法改正で、養護施設は収容児童の養護だけでなく、自立を支援するための家族関係の調整を行うことまでも守備範囲にすることが明文化された。それに伴って、全国の児童養護施設に、入所児童の家族との調整役をつとめかわってくるファミリーソーシャルワー力ーを配置することが決定されたわけである。」「肝心なことは、子どもたちという「繭の中の『いのち』の可能性」をいかに豊かに開いていくか、どうしたら子どもたちの家族関係を回復させることができるか、その一点だけなのだ。制度を整備すればするほど、肝心な一点が霧散していくのは、介護の場所も同様である。」「崩壊した家族関係の犠牲者として養護施設にやってきた子どもたちが「家族」を取り戻すことは果たして可能なのだろうか。著者は次のように述べている。」「児童養護施設の子どもたちにとっての家族像は深く傷つき、根底的な『受け止め』の欠如が心身を凍らせている。もし、この子たちに少しの為せることがあるとすれば、『血に等しい水』あるいは『血よりも濃い水』を差しだし、その『凍った血』を受け止め温めて共に溶かしあうことのほかに何の手立てがありうるだろうか。(略)血と水とは『対』の受けとめと差だしにおいて、等しく働く関係の力なのだ。家族はそこで他者に聞かれている」(86-87P)」「したがって、ファミリーソーシャルワーカーとは「どの家族のうちにもある『家族の原型』をこの世界に対して証しだてるような媒介者である。」と著者は定義する。そして、「子どもたちが、児童養護施設という一つのホームを『普遍化された家族の原型』として捉えることができるとすれば、その原型を心身に踏えて、他の家族とのつながりを捉え直し、さらにはあらたな『家族』を創る歩みをたどれるであろう。(88P)」「本書のタイトル、『家族の再生』とはその長く厳しい道程そのものをさしているだろう。」「「普遍化された家族の原型」としての「ホーム」と、両親を含み子どもとかかわってくれる親族や地域の人々など可能な限りの人的資源の確保-この二つを両輪とすることなしには、子どもたちが成長して新しい家族をつくっていくことはできないだろう」。 「家族崩壊の連鎖を断ち切るという願いは、不可能性の霧にからめとられていくようにしか見えないかもしれない。しかし、「血よりも濃い水」を希求しつづける無償の営みがあり、その人たちによって守られている場所が存在する限りにおいて、その願いは必ずかなえられると私は信じたい。」


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