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既 刊

現代思想/文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/現代社会・制度/地域史・地誌

山地民の歴史と文化 トウナンアジアタイリクブ  サンチミンノレキシトブンカ

●東南アジア大陸部 山地民の歴史と文化

[東京外国語大学
アジア・アフリカ言語文化研究所歴史・民俗叢書Ⅸ]

クリスチャン・ダニエルス【編】
ISBN: 978-4-86209-050-8 C3022
[A五判上製]348p 21cm
(2014-04-05出版)
定価=本体3600円+税

§「国境なき山地民」の歴史と文化。

◆中国雲南省からタイ、ラオス、ミャンマーにわたる国境地帯。そこでは中国および東南アジアの王朝国家の影響を受けつつ、幾つもの「盆地国家」「活仏国家」が生まれ、その版図に接する山地民(民族)の諸文化との交錯が、この地域の歴史・文化をつくってきた。
◆いまなお古代的様相さえうかがえる諸民族・諸集団の政治的霊威、暮らしのダイナミズムをとらえる東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所による総合的な調査・研究報告書。

【目次】
タイ文化圏図
序論(クリスチャン・ダニエルス)
 1.変わる山地民の歴史像
 2.家族の歴史
 3.農耕の技術
第一章 山地民から見た国家と権力―ラフの例から(片岡 樹)
 はじめに
 1.東南アジア大陸部の民族間関係とラフ
 2.ラフの国家と王の概念
 3.架空の国家と架空の王
 おわりに
第二章 ラワ―タイ関係をめぐるナラティブとメタ・ナラティブ(飯島明子)
 はじめに
 1.ラワ―タイ関係をめぐるナラティブ
 2.ラワ―タイ関係をめぐるメタ・ナラティブ
 おわりに
第三章 雲南西南部タイ人政権における山地民の役割―1792年~1836年ムン・コーンにおける国内紛争から読み取れる史像(クリスチャン・ダニエルス)
はじめに
 1.清朝軍とムン・コーン政権
 2.四〇数年の国内紛争(1792~1836)
 3.『年代記』に描写される山地民
 結論
第四章 「周縁」からみた仏教史―シャン州仏教史の試み(村上忠良)
 はじめに―東南アジア内陸山地地域における仏教史
 1.シャン州仏教諸派の歴史
 2.チョーティ派史素描
 まとめにかえて―周縁からの仏教史の可能性
第五章 山地民にとっての文字―中国雲南省ワ族の事例から(山田敦士)
 はじめに
 1.ワ族とその言語  2.ワ族の歴史的環境と文字文化の移入
 3.中国における位置づけ
 4.文字の使用実態―文字使用の追跡調査から
 おわりに
第六章 タイにおけるユーミエンの家族構成の社会史―合同家族から核家族へ
(吉野 晃)

 1.ユーミエン
 2.社会組織、家族と親族
 3.1960年代~1970年代―歴史的変遷
 4.ピャオ構成の変遷
 5.考察
 結論
第七章 タイ文化圏における低人口増加率の検討―一九七一年から二〇〇六年におけるラオス北部の一村の経験から(富田晋介、ネイサン・バデノック)
 はじめに
 1.一九五八年の人口統計資料と集落構成の形成
 2.一九五八年から二〇〇六年までの集落構成の変化
 3.一九七一年から二〇〇六年までの人口動態の復元
 4.多産多死から少産少死へ?
 5.タイ文化圏における出生率と死亡率の特徴
第八章 山地民としてのタイTay―ラオスにおける生産技術の諸相から(園江 満)
 はじめに―タイ文化圏の中のラオスと諸民族
 1.ラオスにおける稲作と生産工具
 2.工芸作物の利用技術―特に砂糖生産技術について
 3.タイ文化圏における生産技術の伝播―「分かつものと」と「繋ぐもの」
執筆者略歴/索引(事項索引、王朝・国家・民族索引、地理・地名索引、人名索引)
Table of Contents in English

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【著者紹介】
[編者]
ダニエルス、クリスチャン Christian Daniels 漢語名:唐立(1953年~)
フィージー生まれ。豪州人。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。専門は中国西南部と東南アジア大陸部北部の歴史。
主な著作・編著に、『雲南物質文化―生活技術巻』、雲南教育出版社、2000年。『四川の伝統文化と生活技術』、慶友社、2003年。『貴州苗族林業契約文書匯編(1736~1950年)』全3巻、東京大学出版会、2005年。『中国雲南耿馬傣文古籍編目』、雲南民族出版社、2005年。『中国雲南少数民族生態関連碑文集』、総合地球環境学研究所、2008年。『論集モンスーンアジアの生態史第2巻 地域の生態史』、弘文堂、2008年。「清朝とコンバウン朝の狭間にある雲南のタイ人政権―1792年~1815年までの国内紛争」『生まれる歴史、創られる歴史―アジア・アフリカ史研究の最前線から』(永原陽子編)、刀水書房、2011年。“Script Without Buddhism: Burmese Influence on the Tay (Shan) Script of Mäng2 Maaw2 as seen in a Chinese Scroll Painting of 1407”, International Journal of Asian Studies, Volume 9, Part 2 (July 2012), pp. 147-176.; ”Blocking the Path of Feral Pigs with Rotten Bamboo: The Role of Upland Peoples in the Crisis of a Tay Polity in Southwest Yunnan, 1792 to 1836”, Southeast Asian Studies, Vol.2, No. 1, April 2013, pp. 133~170.など。

・飯島明子 いいじま あきこ
天理大学国際学部・教授。専門は歴史学、東南アジア大陸部北部の歴史。
論文:「ソーブワーたちをめぐるオーラル・ヒストリー―セーンウィー小史へ向けた覚え書―」『東南アジア研究』45巻3号、2007年。“Preliminary Notes on ‘the Cultural Region of Tham Script Manuscripts’” (Kashinaga Masao ed.) Written Cultures in Mainland Southeast Asia, Osaka: National Museum of Ethnology, 2009.など。
共著:『東南アジア史Ⅰ 大陸部』(石井米雄、桜井由躬雄編、分担執筆)、山川出版社、1999年。『もうひとつの「王様と私」』、めこん、2014年、など。

・片岡 樹 かたおか たつき(1967年~)
東京都生まれ。筑波大学第三学群国際関係学類を卒業。筑波大学大学院地域研究研究科、九州大学大学院比較社会文化研究科を修了。学位は九州大学の博士(比較社会文化)。平成20年より京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授(現在に至る)。専門は、文化人類学、東南アジア地域研究。
主著:片岡樹『タイ山地一神教徒の民族誌―キリスト教徒ラフの国家・民族・文化』、風響社、2007年。
共著:『アジアの人類学』(片岡樹、シンジルト、山田仁史編)、春風社、2013年。

・園江 満 そのえ みつる(1967年~)
東京都生まれ。京都大学博士(農学)、Diploma in Tropical Medicine(Nagasaki Univ.)。ラオス人民民主共和国情報文化省ラオス文化研究所訪問研究員(文部省アジア諸国等派遣留学生)、東京外国語大学、東京農業大学非常勤講師等を経て、日本大学生物資源科学部研究員・講師(非常勤)。ラオスの現地NPOラオス教育振興財団基金幹事。専門分野は文化地理学・タイ(Tay)研究。現在の研究テーマは、タイ文化圏における生態資源利用に関する在来知と在来技術。
共著:『フィールドワーク最前線:見る・聞く・歩く』(山田勇編、分担執筆)、弘文堂、1996年。『世界民族辞典』(綾部恒雄監修、項目執筆)、弘文堂、2000年。『ラオス北部の環境と農耕技術―タイ文化圏における稲作の生態』慶友社、2006年。『タイ辞典』(日本タイ学会編、項目執筆)、めこん、2009年。『タイ文化圏の中のラオス―物質文化・言語・民族』(共編著)、慶友社、2009九年、など。

・富田晋介 とみた しんすけ(1973年~)
宮城県生まれ。京都大学博士(農学)。東京大学農学生命科学研究科助教を経て、ペンシルバニア州立大学客員研究員。専門は、東南アジア地域研究。
共著:『ラオスにおける国民国家建設―理想と現実』(山田紀彦編)、アジア経済研究所、2011年。『ラオスを知るための60章』 (菊池陽子・鈴木玲子・阿部健一編)、明石書店、2010年。『タイ文化圏の中のラオス―物質文化・言語・民族』(新谷忠彦、クリスチャン・ダニエルス、園江満編)、慶友社、2009年など。

・ネイサン・バデノック Nathan Badenoch(1970年~)
アメリカ生まれ。京都大学博士(地域研究)。京都大学白眉センター特定准教授。専門は、東南アジア地域研究。
論文:“Mountain People in the Muang: Creation and Governance of a Tai polity in Northern Laos”, Southeast Asian Studies, vol 2, no 1, April 2013, pp. 29-67; “Managing Competition and Cooperation: Hmong Social Networks and Village Governance”, in Leepreecha et al (eds.) (2008) Challenging the Limits: Indigenous Peoples of the Mekong Region, Chiang Mai: Silkworm Books.
共編: Water Rights and Social Justice in the Mekong Region, 2011, London: Routledge.

・村上忠良 むらかみ ただよし
大阪大学大学院言語文化研究科・准教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科修了。博士(文学)。専門は文化人類学、東南アジア地域研究で、研究テーマは東南アジア大陸部のタイ系民族シャンの宗教と文化。
論文:“Buddhism on the Border: Shan Buddhism and Transborder Migration in Northern Thailand”, Southeast Asian Studies, 1(3), 2012. など。
共著:『〈境域〉の実践―宗教大陸部東南アジア地域と宗教のトポロジー』(林行夫編)、京都大学学術出版会、2009年。『新アジア仏教史4 スリランカ・東南アジア 静と動の仏教』(奈良康明、下田正弘、林行夫編)、佼正出版社、2011年、など。

・山田敦士 やまだ あつし(1976年~)
長野県松本市生まれ。北海道大学大学院修了。博士(文学)。雲南民族大学研究員(平成15年「次世代リーダーフェローシップ」、国際交流基金)、日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、日本医療大学保健医療学部准教授。専門は記述言語学、応用言語学。
著書・論文:“Phonological outline of the Vo dialect” (The Journal of Burma Studies, Vol. 17 No. 1, 61-79, 2013)、『スガンリの記憶:中国雲南省ワ族の口頭伝承』、雄山閣、2009年。『パラウク・ワ語記述文法』博士論文、北海道大学、2008年。「Parauk Wa folktales-佤族(巴绕克)的民间故事」(Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies, 2007)、など。

・吉野 晃 よしの あきら(1954年~)
東京生まれ。東京学藝大学教授。博士(社会人類学)。専門は社会人類学。東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程単位取得退学。
主な著作:『生をつなぐ家―親族研究の新たな地平』(共著)、風響社、2013年。『東アジアにおける宗教文化の再構築』(共著)、風響社、2010年、など。

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