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既 刊

表象交通論/ 文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/ 歴史系/ 哲学・神話・宗教系

キセキトケイレン―キンダイフランスノシュウキョウタイリツとミンシュウブンカ

●奇蹟と痙攣―近代フランスの宗教対立と民衆文化


「奇蹟と痙攣」 蔵持不三也 クラモチフミヤ【著】
ISBN:
978-4-86209-074-4 C3022
[A五判上製]598頁 21cm
(2019-09-10出版)
定価=本体7800円+税

◆無名の「民衆の声」を伝える「奇蹟の証言集」(一次資料)を読み解き、18世紀フランスの「民衆のイマジネール」の動態を描く歴史人類学の大著

●1727年5月1日、パリの貧民街にあるサン=メダール教会で、清貧を貫いたジャンセニストの助祭パリスが息を引き取る。以後、その教会墓地でおびただしい奇蹟的快癒が生まれた。教皇権と王権、イエズス会に激しく抗するジャンセニズムを背景とし、民衆的なメシアニズムを表象するように、奇蹟的治癒者は、みずからが証言・署名した奇蹟体験の「記録」を残した。この民衆の、みずからを証し立てる「声」は、やがて、世紀末、フランス革命の「声」に重なっていく。
●本書は、その膨大な報告書と、奇蹟の真偽や「痙攣派」を巡る攻防の一次史料を詳細に読み解き、フランス近代における「民衆的イマジネール」の動態を描きだした歴史人類学、書きおろし大著。


【目次】
序章 奇跡と痙攣
第1章 助祭パリスの生涯
  パリス伝/パリスの出立/聖職者パリス
第2章 上訴派パリス
 教勅「ウニゲニトゥス」の背景/上訴派の登場/ソアナン問題/「ウニゲニトゥス」問題の顚末
第3章 聖職者通信
 創刊/《聖職者通信》の資金と編集者たち/フィリップ・ブシェの奇蹟論/《聖職者通信》における助祭パリスとその奇蹟/廃刊
第4章 奇蹟の系譜―ポール=ロワイヤルから
 奇蹟とジャンセニスム/ポール=ロワイヤルの受難/聖荊の再発見/奇蹟の場としてのポール=ロワイヤル
第5章 奇蹟の語り―墓地閉鎖前
 『奇蹟集成』の背景/カレ・ド・モンジュロン/奇蹟事例1.27例
第6章 奇蹟の語り―墓地閉鎖後
 奇蹟事例2.10例/『諸奇蹟の真実』における奇蹟報告
第7章 奇蹟の遠近法
 奇蹟体験者の年齢・性別/奇蹟体験者の社会的出自/奇蹟体験者の出自小教区/奇蹟体験者の疾病/奇蹟体験者の年代的分布と墓地閉鎖/「墓地閉鎖」前・後の非パリ在住奇蹟体験者数/聖遺物祈願者/痙攣快癒者
第8章 痙攣派もしくは「痙攣の共同体」
 痙攣派のイメージ/痙攣派の誕生/一七三三年の文書闘争/モンジュロンの護教論/ヴォルテールの兄/痙攣派の諸セクト
終章 歴史の生態系 ―「声」の来歴
 パリス現象の構図 /歴史の生態系―声の来歴
あとがき
註・
主要引用・参考文献一覧
索引

【著者紹介】
蔵持不三也 Fumiya Kuramochi
1946年栃木県今市市(現日光市)生。早稲田大学第1文学部仏文専攻卒業。パリ第4大学(ソルボンヌ大学)修士課程修了(比較文化専攻)。社会科学高等研究院博士課程修了(民族学専攻)。モンペリエ大学客員教授。早稲田大学人間科学学術院教授を経て現在、早稲田大学名誉教授。
著書:『ワインの民族誌』(筑摩書房)、『シャリヴァリ―民衆文化の修辞学』(同文館)、『ペストの文化誌―ヨーロッパの民衆文化と疫病』(朝日新聞社)、『シャルラタン―歴史と諧謔の仕掛人たち』、『英雄の表徴』(以上、新評論)ほか多数。
共・編著・監修:『ヨーロッパの祝祭』(河出書房新社)、『神話・象徴・イメージ』(原書房)、『エコ・イマジネール―文化の生態系と人類学的眺望』、『医食の文化学』、『ヨーロッパ民衆文化の想像力』、『文化の遠近法』(以上言叢社)ほか多数 翻訳・共訳:エミール・バンヴェニスト『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集』(全2巻、言叢社)、A・ルロワーグーラン『世界の根源』(言叢社、文庫版・ちくま学芸文庫)、ベルナール・ステファヌ『図説パリの街路歴史物語』(2巻)、同『パリ地名大事典』、ニコル・ルメートルほか『図説キリスト教文化事典』、アンリ・タンクほか『ラルース版世界宗教大図鑑』、ミシェル・パストゥルー『赤の歴史文化図鑑』(以上、原書房)、マーティン・ライアンズ『本の歴史文化図鑑』、ダイアナ・ニューオールほか『世界の文様歴史文化図鑑』、フィリップ・パーカー『世界の交易ルート大図鑑』(以上柊風舎)ほか多数。

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