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既 刊

西洋文化の起源へ/ 文化人類学・民族学・民俗学・歴史人類学/ 美術造形・美術史/ 歴史系/ 神話・宗教系

ヨーロッパ民衆文化の想像力 ヨーロッパミンシュウブンカノソウゾウリョク
 ―ミンワ・ジョジシ・シュクサイ・ゾウケイヒョウゲン

●ヨーロッパ民衆文化の想像力
 ―民話・叙事詩・祝祭・造形表現

早稲田大学日欧研究機構 ヨーロッパ民俗研究所
伊東一郎・蔵持不三也・松平俊久
イトウイチロウ・クラモチフミヤ・マツダイラトシヒサ【著】
ISBN: 9784862090461
[A五判上製]240p 21cm
(2013-09-27出版)
定価3360(本体3200)円

●18世紀後葉に発展したヨーロッパの民俗学、すなわち「民衆=知」(folk-lore)研究は、民衆生活や社会的現実ではなく、過去への憧憬や民族的心性などに向けられ、それゆえにすぐれて叙情的なものとしてあった。
●20世紀に入ると、対象社会の文化的な深層構造への眼差しが問われ、20世紀後葉には、文化人類学や歴史学などの関連分野と結びつきながら、研究対象・主題の多様化と分析方法の革新、異分野への戦略的な侵犯によって、新たな社会科学として歩み始めた。
●本書の試みは、この民俗学の可能性をさらに展開させようとするものである。

【目次】
序=伊東一郎

◆スラヴ民話における「一二ヶ月物語」―フォークロアにおける時の人格化をめぐって
=伊東一郎
 1.マルシャーク『一二ヶ月』とスラヴ民話/2.ロシアの「一二ヶ月物語」/3.スロヴァキアの「一二ヶ月物語」/4.チェコの「一二ヶ月物語」/5.スロヴェニアの「一二ヶ月物語」/6.マケドニアの「一二ヶ月物語」/7.月の人格化/8.スラヴ民衆文化における「三月」/9.イタリア民話との比較から/最後に

◆巡礼霊歌からイコンへ―ロシアにおける「聖ゲオルギオスと竜」伝説
=伊東一郎
 はじめに/1.『黄金伝説』における聖ゲオルギオス伝説(『黄金伝説』における聖ゲオルギオスの殉教伝説/『黄金伝説』における竜退治伝説)/2.ロシアにおける聖ゲオルギオス崇拝/3.中世ロシア語写本における「聖ゲオルギオスの竜退治」伝説/4.巡礼霊歌における「聖ゲオルギオスの竜退治」(巡礼霊歌のテキスト/巡礼霊歌と聖者伝/巡礼霊歌と中世ロシア精神史/巡礼霊歌と他のロシア・フォークロア)/5.イコンにおける聖ゲオルギオス(「聖ゲオルギオスの竜退治」のイコンの3つの形式/「竜を王女に曳かせる聖ゲオルギオス」のイコンと巡礼霊歌)/結論


◆祝祭論―アルザス地方の火祭りとその変容
=蔵持不三也
 はじめに/1.フランスの徴兵制/2.祝祭の変容(変容①:人的構成/変容②:バラ帽子作り/変容③:火塚(ファッケル)/変容④:行進/変容⑤:火入れ/変容:総括)/3.変容の意味/おわりに

ヨーロッパ民衆文化の想像力 祝祭前に訪れるひとときの静寂のなかで火入れを待つ、完成したかつての火塚。
民衆の「想像力」に基づくこの巨大な祝祭装置は、今日、残念ながら粗雑なものとなってしまっている。それもまた、変容をつねとする文化の習性にほかならないが、祝祭自体は営まれ続けている。そうした現状から窺えるのは、アルザスの伝統的な「文化の生態系(エコ=カルチャー)」の変容と、ヨハネの火祭りをめぐる「文化の規制力」の存在である。
1996年、スルツバック=レ=バン(フランス・アルザス地方)。蔵持不三也撮影。

◆民衆造形文化論
―南仏マルセイユのノートル=ダム・ド・ラ・ギャルド大聖堂におけるex-voto(奉納画)を事例として
=松平俊久・蔵持不三也
1.ex-votoとは何か――はじめにかえて/2.ノートル=ダム・ド・ラ・ギャルド大聖堂(大聖堂の概況/大聖堂小史[創建からフランス革命時まで/革命収束以降/主祭壇・地下聖堂・鐘楼の聖母子像/19世紀のex-votoの様子])/3.プロヴァンス地方の聖母信仰(指標①:聖母への献堂と苦行会の設立・活動/指標②:奇蹟譚とそれにまつわるex-votoの奉納/指標③:聖母を冠した命名)/4.奉納画の主題と背景(奉納画の概況/事件性を帯びた主題の作例[陸上事故①:狩猟事故・馬車事故・鉄道事故/陸上事故②:天災事故(落雷)/陸上事故③:火災事故/海難事故/航空事故]/事件性を帯びていない主題の作例[成人の快癒/子どもの快癒]/作例にみる奉納画の特徴)/5.奉納画の分析(抽出する主題・要素/各礼拝堂の奉納画の詳細[聖マグダラのマリア礼拝堂/聖ペテロ礼拝堂/聖カルロ・ボッロメーオ礼拝堂/聖ラザロ礼拝堂/聖ヨセフ礼拝堂]/指標①:奉納画の主題/指標②:奉納画の年代/指標③:奉納画における聖母(子)の描写と構図)/6.奉納画の意味と機能――おわりにかえて


左から、 聖母の加護によって火災事故から救われたことに感謝し、誓願を立てた1869年の奉納画。安達みさと氏撮影。/
成人の快癒奉納画の一例。1865年誓願。聖ラザロ礼拝堂。藤井紘司氏撮影。/
1784年誓願。聖ラザロ礼拝堂。藤井紘司氏撮影。 ↑もどる

【著者紹介】
・伊東一郎(1949年~)
北海道札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了・博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学文学学術院教授、同大学日欧研究機構ヨーロッパ民俗研究所所長。スラヴ比較民族学、ロシア文化史専攻。
著書: 『スラヴ民族と東欧ロシア』(共著、山川出版社)、『スラヴの文化』(共著、弘文堂)、『マーシャは川を渡れない』(東洋書店)、『ロシアフォークロアの世界』(編著、群像社)、『文化の透視法』(共編著、南雲堂)ほか。
訳書: 『ラフマーニノフ歌曲歌詞対訳全集』(新期社)、M・バフチン『小説の言葉』(平凡社)、M・バフチン『ことば対話テクスト』(共訳、新時代社)、『ミハイル・バフチン全著作 第1巻・第5巻』(共訳、水声社)、『子どもに語るロシアの昔話』(共訳、こぐま社)ほか。

・蔵持不三也(1946年~)
栃木県今市市(現日光市)生まれ。早稲田大学第一文学部卒。パリ第4大学ソルボンヌ校修士課程・パリ社会科学高等研究院博士課程修了。現在、早稲田大学人間科学学術院教授、同大学総合研究機構国際医食文化研究所所長、同大学日欧研究機構ヨーロッパ民俗研究所研究員。博士(人間科学)。文化人類学、フランス民族学専攻。
著書: 『シャリヴァリ』(同文舘)、『ペストの文化誌』(朝日新聞社)、『ヨーロッパの祝祭』(編共著、河出書房新社)、『神話・象徴・イメージ』(編著、原書房)、『シャルラタン』(新評論)、 『エコ・イマジネール』(監修、言叢社)、『英雄の表徴』(新評論)、 『医食の文化学』(共著、言叢社)ほか多数。
訳書: É・バンヴェニスト 『インド=ヨーロッパ諸制度語彙集Ⅰ・Ⅱ』(共訳、言叢社)、E・ル・ロワ・ラデュリ『南仏ロマンの謝肉祭』(新評論)、R・キング『図説人類の起源と移住の歴史』(共訳、柊風舎)、P・アナワルト『世界の民族衣装文化図鑑』(監修、柊風舎)、H・タンク編『ラルース世界宗教大図鑑』(原書房)ほか多数。

・松平俊久(1974年~)
栃木県佐野市生まれ。早稲田大学人間科学部卒。早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了。同大学大学院同研究科博士後期課程満期退学。現在、早稲田大学総合研究機構国際医食文化研究所客員次席研究員、同大学文化構想学部兼担講師、同大学日欧研究機構ヨーロッパ民俗研究所招聘研究員、自治医科大学看護学部・女子栄養大学栄養学部非常勤講師。造形人類学、ヨーロッパ文化論・文化誌・文化史専攻。
著書: 『ヨーロッパ怪物文化誌事典』(原書房)、 『エコ・イマジネール』(共著、言叢社)、『医食文化の世界』(共編著、早稲田大学国際医食文化研究所)、『人と動物の人類学』(共 著、春風社)。
訳書: C・デル『世界の怪物・魔物文化図鑑』(柊風舎)、D・ニューオール&C・アンウィン『世界の文様歴史文化図鑑』(監訳、柊風舎)、J・ヘイウッド『世界の民族・国家興亡歴史地図年表』(共訳、柊風舎)。

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